前立腺肥大症の治療薬、ユリーフ[シロドシン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ユリーフ[シロドシン]:前立腺肥大症治療薬
ユリーフ[シロドシン]は、前立腺肥大症に伴う排尿困難の治療薬として使用されています。
前立腺とは、男性が持つ膀胱の下部にある生殖器であり、精液を作ったり、精子を守ったりといった働きをしています。
この前立腺が何らかの影響で大きく膨れがってしまい、尿が出にくくなってしまう病気が前立腺肥大症です。
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症の原因は、大きく2つに分けられます。
前立腺そのものが大きくなりすぎている場合と、交感神経が過敏に緊張し尿道が狭くなっている場合です。
- 物理的な原因:前立腺そのものが大きくなる
- 機能的な原因:交感神経の緊張
ユリーフ[シロドシン]の作用機序
前立腺肥大症に伴う排尿困難の中で最も多く使用されている薬が、α1遮断作用を持つ薬です。
前立腺肥大症の機能的な原因で出てきたように、交感神経の緊張が排尿困難を引き起こすひとつの原因です。
この交感神経の緊張を緩めるために、α1遮断薬が使用されます。
α1遮断薬の代表的な薬がユリーフです。
ユリーフは、前立腺に存在するα1受容体をブロック、遮断することにより、過剰な交感神経の働きを抑えることで前立腺平滑筋を弛緩し、尿道を確保する薬です。
やっくん
ユリーフ[シロドシン]は、前立腺にあるα1A受容体を選択的に阻害することで、ノルアドレナリンの働きによる前立腺の収縮を抑制し、前立腺肥大症に伴う排尿困難の治療に使用されます。
ユリーフの特徴:ハルナールとの違い[α1A受容体選択性において]
ユリーフは、ハルナールと同様、α1A受容体を選択的に阻害しますが、α1A受容体への選択性がより高いといった報告があります。
α1A受容体 [α1A/α1B] |
α1D受容体 [α1D/α1B] |
|
---|---|---|
ユリーフ[シロドシン] | 162 | 2.95 |
ハルナール[タムスロシン] | 9.55 | 3.80 |
- α1受容体の中でも、α1A・1D受容体は、前立腺に多く存在するため、前立腺の収縮を抑制する作用があります。
- α1受容体の中でも、α1B受容体は、血管内に多く存在するため、血圧を下げる作用があります。
ユリーフは、α1A受容体の選択性が、α1B受容体に対して162倍あります。
ハルナールは、α1A受容体の選択性が、α1B受容体に対して9.55倍しかありません。
やっくん
ユリーフは、ハルナールよりもより効果的に前立腺のα1A受容体に働くと考えられます。
ユリーフ[シロドシン]の副作用
ユリーフ[シロドシン]は、前立腺肥大症の治療薬として、2009年に承認された比較的新しい薬です。
主な副作用としては、射精障害(逆行性射精等)[17.2%]、口渇[5.7%]、下痢[4.0%]、軟便[3.9%]、立ちくらみ[3.6%]、鼻閉[3.3%]、めまい[2.6%]、ふらつき[2.5%]、頭痛[2.2%]などが挙げられます。
ユリーフの副作用で立ちくらみ、めまい、ふらつきが起こる理由
ユリーフは、前立腺のα1受容体の中でもα1A受容体を選択的に遮断する作用を持っています。
一方で、α1受容体の中でも、特にα1B受容体は、血管内に多く存在します。
ユリーフは、わずかではありますが、血管のα1B受容体にも遮断作用を示すため、血圧が下がり、めまいやふらつきを起こしやすくなるのです。
ユリーフ[シロドシン]の禁忌
- 特になし