ステロイド外用薬、キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]の効能、強さ、副作用について解説しています。
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]:ステロイド外用薬
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]は、アトピー性皮膚炎などの治療に使用されるステロイド外用薬です。
アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎とは、皮膚の中の水分を正常に保つセラミドが減少し、水分の保持が難しくなりアレルゲンが体内に入りやすい状態になっています。
アトピー性皮膚炎の原因は、ダニやほこりなどのハウスダストや乾燥、ストレスなど様々な環境が影響しています。
アトピー性皮膚炎は、次の3つの症状を生じます。
- 皮膚バリア機能の破たん
- アレルゲンの侵入
- 炎症・かゆみ
それぞれの症状を改善するために、アトピー性皮膚炎の治療では、次の3つが基本となります。
- スキンケア
- アレルゲンの特定、侵入阻止
- 薬物療法
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]の強さ、作用機序
アトピー性皮膚炎の治療のひとつが薬物療法です。
外部からのアレルゲンや異物が侵入し、ヒスタミンが放出されるとかゆみを、ヘルパーT細胞によって免疫反応が起こると炎症を生じます。
アトピー性皮膚炎の炎症を抑える外用薬としては、ステロイド外用薬とプロトピック軟膏[タクロリムス軟膏]が使用されます。
キンダベートは、クロベタゾン酪酸エステルを有効成分とするステロイド外用薬です。
ステロイド外用薬の中では、下から2番目のミディアムに分類されます。
そのため顔や陰部など皮膚の薄い部位や、小児・乳児・赤ちゃんなどの皮膚にも使用されます。
ステロイド外用薬強さ一覧表
強さ |
薬品名 |
---|---|
ストロンゲスト |
デルモベート、ダイアコート |
ベリーストロング |
リンデロンDP、マイザー、ネリゾナ、トプシム、フルメタ、アンテベート |
ストロング |
メサデルム、リンデロンV、プロパデルム、エクラー、ボアラ、フルコート、ドレニゾン |
ミディアム |
リドメックス、レダコート、ロコイド、キンダベート、アルメタ |
ウィーク |
プレドニゾロン |
キンダベートの有効成分であるクロベタゾン酪酸エステルは、脂溶性で分子量が478.98と比較的小さいことから、細胞内へ取り込まれます。
細胞膜を通過し細胞質へ取り込まれると、グルココルチコイド受容体[GR]に結合し、核内へ侵入します。
キンダベートを含むステロイド外用薬は、この核内において2つの作用を示します。
1つ目は、GR結合部位[GRE]に結合することでリポコルチンと呼ばれるタンパク質の転写を誘導します。
リポコルチンの作用の1つがホスホリパーゼA2の阻害作用であるため、アラキドン酸カスケードにおけるプロスタグランジン[PG]とロイコトリエン[LT]といった炎症に関与する局所ホルモンの生合成を阻害するのです。
2つ目は、AP-1やNF-κBなどの炎症性転写因子に直接結合する作用です。
これら炎症性転写因子の作用を抑制することで、炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-6の産生を抑制します。
やっくん
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]は、局所ホルモンの生合成阻害作用、炎症性サイトカインの生合成阻害作用により、抗炎症作用を示します。
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]の効能:虫刺されやニキビ
キンダベートは、アトピー性皮膚炎に伴う炎症やかゆみ以外にも、一般的なじんましんや湿疹、日焼けによる炎症、虫刺されなどに使用されます。
一方で、ざ瘡[ニキビ]にはキンダベートを含むステロイド外用薬は推奨されていません。
ステロイド外用薬に炎症を抑える作用はありますが、ざ瘡の誘発する作用も報告されているためです。
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]の使い方
ステロイド外用薬は、ヒルドイドソフト軟膏やヒルドイドクリームなど保湿薬と併用する場合が少なくありません。
保湿剤とステロイド薬どちらを先に塗るべきかよく議論になりますが、特に塗る順番は決まっていません。
一般的に、保湿剤の後にステロイド薬を塗るよう皮膚科医は指導していますが、効果を優先する場合は、ステロイド薬のあとに保湿剤を塗る場合もあります。
塗り薬の塗布量は、1FTU(フィンガーチップユニット)が良く使われます。
通常、1FTU(フィンガーチップユニット)とは、人差し指の先から第一関節まで出した量であり、1FTUで成人のてのひらの面積約2枚分に相当します。
キンダベート軟膏は、5g、10gのチューブが主に使用されており、人差し指までの1FTU[約2.5cm=0.25g、0.5g]がそれぞれ手のひら1枚分、2枚分に相当します。
[キンダベート軟膏5、10gチューブの場合]
ステロイド外用薬の塗り方は2種類あります。
症状が悪い時に薬を塗るリアクティブ[reactive]療法と、症状が良くなっても間欠的に薬を塗るプロアクティブ[proactive]療法です。
保湿薬は毎日欠かさず塗り続けます。
アトピー性皮膚炎の症状の強さによって使い分けされており、一般的には症状が弱い場合にリアクティブ療法を、症状が強い場合はプロアクティブ療法が使用されています。
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]の副作用
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]は、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の治療薬として、1983年に承認された比較的古い薬です。
キンダベートの主な副作用は、そう痒[0.13%]、毛のう炎・せつ[0.10%]、刺激感[0.09%]、ステロイドざ瘡[0.08%]、皮疹の増悪[0.05%]などが挙げられます。
キンダベートの副作用皮膚萎縮について
ステロイド外用薬では、皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド潮紅、多毛、皮膚萎縮線条、細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症の悪化が主な副作用として報告されています。
基本的には、ステロイド外用薬の使用を止めると治まりますが、皮膚萎縮のみ注意が必要です。
皮膚萎縮とは、皮膚が薄くなることを指します。
皮膚は、紫外線や外部刺激によって絶えず傷つけられており、新しい皮膚へと作り替わります[ターンオーバー]。
このターンオーバーにおいて、コラーゲンやヒアルロン酸などの産生に働くのが線維芽細胞です。
キンダベートを含むステロイド外用薬は、線維芽細胞の増殖抑制やコラーゲンの産生抑制などにより、皮膚の結合組織を破たんさせると考えられています。
この皮膚萎縮に対する治療法は確立されておらず、ステロイド外用薬を中止しても100%もとには戻らないと言われています。
そのため、ステロイド外用薬を漫然とは使用せず、ある程度強めの薬を短期間で用いる方法が取られています。
キンダベート[クロベタゾン酪酸エステル]の禁忌
- 細菌、真菌、ウイルス皮膚感染症(病期あるいは症状に応じて使用すること)
[感染を悪化させるおそれがあります。] - 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎
[穿孔部位の治癒が遅れるおそれがあります。また、感染のおそれがあります。] - 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷
[皮膚の再生が抑制され、治癒が著しく遅れるおそれがあります。]