【新着記事】新型コロナウイルスの対策についてまとめました

ドボベット軟膏作用機序、特徴、副作用:尋常性乾癬治療薬

記事内に広告を含みます

角化性皮膚疾患イラスト

乾癬の治療薬として使用される薬のひとつが、2種類の成分が配合されているドボベット軟膏[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]です。

このページでは、ドボベット軟膏[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。

ドボベット[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]

ドボベット[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]は、尋常性乾癬に使用される活性型ビタミンD3製剤とステロイドの配合剤です。

乾癬とは?

乾癬とは、皮膚の炎症に加え、表皮のターンオーバーの異常を伴う疾患です。

そのため、皮膚が赤くなり、大量の鱗屑[白いフケのようなもの]を生じます。

乾癬症状

[写真は日本皮膚科学会より]

乾癬の原因は、はっきりとはわかっていません。

現時点では、遺伝的な要因に加え、食生活の乱れ・ストレス・糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病など様々な環境や疾患が影響していると考えられています。

乾癬の患部においては、炎症性サイトカインであるTNF-αが大量に産生されていることが確認されています。

乾癬の治療では、次の4つが基本となります。

  1. 外用薬
  2. 内服薬
  3. 紫外線療法
  4. 生物学的製剤

乾癬症状原因

ドボベット[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]の作用機序

尋常性乾癬を含む乾癬の治療では薬物療法が中心となります。

中でも外用薬を使った治療が基本です。

外用薬でも効果が不十分の場合に、内服薬や紫外線療法、生物学的製剤の使用を検討します。

外用薬は、乾癬の主な症状である“炎症・紅斑”“鱗屑・肥厚”に対してそれぞれ使用されます。

炎症・紅斑に対してはステロイド外用薬が、鱗屑・肥厚に対してはビタミンD3製剤が使用されます。

乾癬治療薬

MEMO

ドボベットは、カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステルを有効成分とする活性型ビタミンD3製剤とステロイドの配合薬です。

カルシポトリオールはドボネックスとして、ベタメタゾンジプロピオン酸エステルはリンデロンDPとして単剤では使用されています。

ドボネックスの作用機序

活性型ビタミンD3製剤が乾癬に使用されるようになったのは、乾癬を伴う骨粗鬆症患者に内服の活性型ビタミンD3製剤が使用されたことがきっかけでした。

ドボベットの有効成分の1つであるドボネックス[カルシポトリオール]は、核内にあるビタミンD受容体に結合することで、標的遺伝子の転写を活性化します。

その結果、細胞の分化誘導作用・表皮角化細胞の増殖抑制、IL-6産生抑制などの免疫調節作用を示します。

表皮の新陳代謝を正常化させることによって、鱗屑や肥厚に対して効果を示すのです。

ドボベット作用機序

やっくん

ドボネックス[カルシポトリオール]は、ビタミンD3受容体に結合し、分化誘導作用・角化細胞増殖抑制、IL-6産生抑制作用などを示し、表皮の新陳代謝の異常を整えます。

リンデロンDPの作用機序

ドボベットの有効成分の1つであるリンデロンDPは、ベタメタゾンジプロピオン酸エステルを有効成分とするステロイド外用薬です。

ステロイド外用薬の中では、2番目に強いベリーストロングに分類されます。

そのため顔や陰部など皮膚の薄い部位には使用されません。

ステロイド外用薬強さ一覧表

強さ

薬品名

ストロンゲスト

デルモベート、ダイアコート

ベリーストロング

リンデロンDP、マイザー、ネリゾナ、トプシム、フルメタ、アンテベート

ストロング

メサデルム、リンデロンV、プロパデルム、エクラー、ボアラ、フルコート、ドレニゾン

ミディアム

リドメックス、ケナコルトA、レダコート、ロコイド、キンダベート、アルメタ

ウィーク

プレドニゾロン

リンデロンDPの有効成分であるベタメタゾンジプロピオン酸エステルは、脂溶性で分子量が504.59と比較的小さいことから、細胞内へ取り込まれます。

細胞膜を通過し細胞質へ取り込まれると、グルココルチコイド受容体[GR]に結合し、核内へ侵入します。

リンデロンDPを含むステロイド外用薬は、この核内において2つの作用を示します。

リンデロンDPの作用機序①

1つ目は、GR結合部位[GRE]に結合することでリポコルチンと呼ばれるタンパク質の転写を誘導します。

リポコルチンの作用の1つがホスホリパーゼA2の阻害作用であるため、アラキドン酸カスケードにおけるプロスタグランジン[PG]とロイコトリエン[LT]といった炎症に関与する局所ホルモンの生合成を阻害するのです。

リンデロンDP作用機序

リンデロンDPの作用機序②

2つ目は、AP-1やNF-κBなどの炎症性転写因子に直接結合する作用です。

これら炎症性転写因子の作用を抑制することで、炎症性サイトカインであるTNF-αやIL-6の産生を抑制します。

リンデロンDP作用機序

やっくん

リンデロンDP[ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]は、局所ホルモンの生合成阻害作用、炎症性サイトカインの生合成阻害作用により、抗炎症作用を示します。

ドボベット軟膏の特徴:安定性、塗布回数

ドボベット軟膏の特徴は次の2つです。

  1. 安定性が高い
  2. 1日1回の塗布で速やかな効果
ドボベット軟膏の安定性

従来は、尋常性乾癬の治療において、活性型ビタミンD3製剤とステロイド外用薬を混合して出すことが一般的でした。

しかし、活性型ビタミンD3製剤はアルカリ性で安定であり、ステロイド外用薬は酸性~中性で安定です。

両者を混合してしまうと、アルカリ性で安定な活性型ビタミンD3製剤が酸性側に傾いてしまい、2週間程度でも濃度の低下が確認されていました。

ドボベット軟膏は、水を含まない基剤を用いることで両者が完全に混ざり合うことのない環境を作った「pHITech」といった独自の技術で製造後2年間安定性を保った製剤です。

ドボベット軟膏は1日1回の塗布でOK

従来は、オキサロール、リンデロンDPともに尋常性乾癬に用いる場合は、1日2回に分けて塗布しなければなりませんでした。

ドボベット軟膏は、1日1回でも十分な効果が得られることが報告されているため、患者さんの負担を大きく減らすことができます。

ドボベット[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]の副作用

ドボベット[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]は、尋常性乾癬の治療薬として、2014年に承認された薬です。

注意

ドボベットの主な副作用は、毛包炎[0.8%]、膿疱性発疹、乾癬の悪化、色素脱失、肝機能異常、単純ヘルペス、末梢性浮腫及び挫傷[各0.4%]などが挙げられます。

ドボベットを含む活性型ビタミンD3外用薬の副作用に高カルシウム血症があります。

活性型ビタミンD3内服薬は、アルファロールやエディロールなどカルシウムの吸収を高めるため、骨粗鬆症の治療薬として使用されます。

活性型ビタミンD3外用薬においても、カルシウムの血中濃度が高くなることが報告されているため注意が必要です。

MEMO

高カルシウム血症の初期症状は、便秘や吐き気、食欲不振などであるため見落としがちです。

そのため、ドボベットの使用直後は血中濃度の検査、その後も定期的にカルシウム濃度の検査を行います。

ドボベット[カルシポトリオール/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル]の禁忌

  • 細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)
    [これらの疾患が増悪するおそれがあります。]
  • 潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱傷・凍傷
    [皮膚の再生が抑制され、治癒が遅延するおそれがあります。]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

error: Content is protected !!