かかりつけ薬局からかかりつけ薬剤師へ
医薬分業が進み、処方箋の発行枚数は増え続けています。
[厚生労働省資料より]
しかし、医薬分業によって患者の負担額が上がる分、患者にとってのメリットを実感できているでしょうか?
残念ながら、ひとりの患者の薬を一元的に管理するという「かかりつけ薬局」は言葉すら浸透していません。
現状は、クリニックや病院前にある門前薬局に処方箋を持っていくため、お薬手帳を持っていなければ、薬を一元的に管理できているとは言えないのです。
薬剤師は本来、多剤投与や薬の重複を減らすなどして有害事象を減らさなければなりません。
そのためにも、患者が選択した「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」が、処方医と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握する必要があるのです。
そうすることで、患者に対して適切な服薬指導を行う業務としてかかりつけ薬剤師という言葉が誕生しました。
[厚生労働省資料より]
かかりつけ薬剤師の要件
かかりつけ薬剤師は、患者の薬を一元的に管理するだけではなく、服薬後の経過[副作用の有無や飲み間違い時の対応など]や残薬の整理、全ての医療機関へのフィードバックなどが求められています。
また、30代女性からは20-21時頃にお薬の相談ができると助かるといった報告もされています。
そのため、以下のような項目が要件として必要ではないかと考えられました。
- 保険薬剤師として一定年数以上の薬局勤務経験
- 当該保険薬局に週の一定時間以上勤務
- 当該保険薬局に一定期間以上の在籍
- 研修認定の取得
- 医療に係る地域活動への参画
2016年診療報酬改定内容-かかりつけ薬剤師新設-
かかりつけ薬剤師指導料
患者の服薬状況を一元的・継続的に把握した上で患者に対して服薬指導等を行うことが評価されました。
これにより重複投与や残薬整理による医療費の削減が期待されています。
新設 |
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かかりつけ薬剤師指導料 70点 |
[算定要件]
②同意については、当該患者の署名付きの同意書を作成した上で保管し、その旨を薬剤服用歴に記載する。
③患者1人に対して、1人の保険薬剤師のみがかかりつけ薬剤師指導料を算定できる。かかりつけ薬剤師以外の保険薬剤師が指導等を行った場合は当該指導料を算定できない。[要件を満たせば、薬剤服用歴管理指導料は算定できる] ④手帳等にかかりつけ薬剤師の氏名、勤務先の保険薬局の名称及び連絡先を記載する。
⑤担当患者に対して以下の業務を実施すること。
ア 薬剤服用歴管理指導料に係る業務
イ 患者が受診している全ての保険医療機関、服用薬等の情報を把握
ウ 担当患者から24時間相談に応じる体制をとり、患者に開局時間外の連絡先を伝え、勤務表を交付(やむを得ない場合は当該薬局の別の薬剤師でも可)
エ 調剤後も患者の服薬状況、指導等の内容を処方医に情報提供し、必要に応じて処方提案
オ 必要に応じて患家を訪問して服用薬の整理等を実施
[施設基準]
(1) 以下の経験等を全て満たしていること。
- 施設基準の届出時点において、保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があること。
[疑義解釈その1より、病院薬剤師の勤務経験は1年を上限として、薬局勤務経験に含めることができます。] - 当該保険薬局に週32時間以上勤務していること。
- 施設基準の届出時点において、当該保険薬局に6ヶ月以上在籍していること。
(2) 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。
[疑義解釈その1より、日本医療薬学会の認定制度も含まれます。]
【当該規定は、平成29年4月1日から施行と猶予期間有】
(3) 医療に係る地域活動の取組に参画していること。
地域活動の取組に参画とは?
なお、企業が主催する講演会等は、通常、地域活動の取組には含まれないと考えられる。
[厚生労働省 2016年診療報酬改定 疑義解釈その1より]
私は、かかりつけ薬剤師の基準で一番曖昧な項目と考えていましたが、今回の疑義解釈でもはっきりとはしませんでした。
今回わかったことは、メーカー主催の勉強会や薬剤師会主催の薬剤師向けの研修会は該当しないということでしょう。
また、各地域の厚生局によって判断が異なっているため、かなりの混乱が生じています。
対象はあくまでも地域住民であるため、行政機関や自治体が主催する健康フェスタや健康フェアに参加したり、薬局自ら健康フェアやお薬の正しい使い方の説明会を開催したり[近畿の場合は、厚生局から薬局が主催の場合は当てはまらないと指導あり]などが当てはまるということではないでしょうか。
在宅の薬局にいれば、施設や患者家族向けに勉強会をすることやクリニック主催の勉強会に参加することがありますが、これらも基本的には当てはまらないと考えられます。
以下、地域活動の取組で受理・不受理された事例を紹介します。
◆受理された例
- ○○薬剤師会で実施した健康フェアへの参加
- 休日の地域への医療提供している○○薬剤師会の○○広域休日急病診療所に従事
- 行政機関や地域薬剤師会の協力のもとで実施している輪番制で行っている休日当番薬局
- 学校薬剤師として、○○地域の学校環境衛生についての検査、児童・生徒への指導、助言を行う地域活動
- 行政機関の依頼に基づく無料お薬相談会の実施
◆不受理された例
- 薬局主体での地域住民対象に健康教室の開催
- 地域の医療機関が連携し、在宅・医療・介護に関する多職種会議への参画
このように、一見問題なさそうな項目でも受理されなかった例が存在します。
ポイントは主催する側が薬局ではなく、対象が住民であることではないかと考えられます。
地域によって解釈が異なっているということなので、まずは地域の薬剤師会に相談してみることが一番かと思われます。
基準調剤加算の今後新しい情報が入り次第、こちらにアップ致します。
2016/5/19追記
本日、厚生労働省の疑義解釈資料その3より「医療に係る地域活動の取組に参画していること」とは何か?について公表されました。
基本的には次の2つのケースが当てはまります。
②行政機関や地域医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力のもとで実施している休日夜間薬局としての対応、休日夜間診療所への派遣
③委嘱を受けて行う学校薬剤師の業務等