認知症の治療薬として使用されるリバスタッチパッチ、イクセロンパッチ[リバスチグミン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]:認知症治療薬
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]は認知症の治療薬です。
認知症というのは、もの忘れと混同しがちですが単なる記憶障害とは異なります。
認知症患者は、記憶障害および、記憶以外の失語、失行、失認、遂行機能障害のいずれかを伴います。
さらに、認知症で問題になるのは、認知症に伴う行動異常と心理症状です。
この行動異常と心理症状を合わせてBPSD[behavioral and psychological symptoms of dementia]と言います。
BPSDの主な症状は、以下の通りです。
心理症状:不安、うつ症状、幻覚、妄想などです。
BPSD(行動異常と心理症状)は、認知症患者の約80%で見られる症状です。
介護施設や老人施設では、これらBPSDの症状で苦しんでいるのが現状です。
これらBPSDを抑制、改善するために、認知症薬が使用されます。
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]の作用機序
認知症の中で最も多いのが、アルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症に次いで多いのが、レビー小体型認知症です。
そのため、認知症の治療薬は、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症をターゲットにしています。
アルツハイマー型認知症の原因は不明とされていますが、脳の画像検査や、脳の解剖結果からいくつかの特徴を見出しました。
その特徴のひとつが、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリン活性の低下です。
そこで、アセチルコリン活性の低下が、脳の委縮や記憶障害に関与しているのでは?と考えられました。
このアセチルコリンの活性を高める薬がリバスタッチ、イクセロンです。
リバスタッチ、イクセロンは内容成分は同一ですが、製造販売元が異なります。
リバスタッチが小野薬品工業、イクセロンがノバルティスファーマが製造販売しています。
シナプス前終末より分泌されたアセチルコリンは、アセチルコリンの受容体に作用しますが、その間もコリンエステラーゼと呼ばれる分解酵素によって、コリンと酢酸に分解されていきます。
リバスタッチ、イクセロンはアセチルコリンエステラーゼ[AchE]、ブチリルコリンエステラーゼ[BuchE]と2種類のコリンエステラーゼの作用を阻害することで、脳内のアセチルコリン量を増やすのです。
やっくん
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]は、選択的に脳内の2種類のコリンエステラーゼ[AchE、BuchE]を阻害することで、脳内で不足しているアセチルコリン量を増やし、アルツハイマー型認知症の進行を抑制します。
リバスタッチ/イクセロンがパッチ剤である理由
リバスタッチ、イクセロンは飲み薬ではなく、1日1回の貼り薬[パッチ剤]として使用されています。
パッチ剤として使用されている理由は、飲み薬で使用した場合、悪心や嘔吐といった消化器症状の副作用が多く認められたといった背景があるからです。
また、リバスタッチ・イクセロンパッチの含有量は一定であるため、1/2枚など半分に分割して使用することも可能になります。
[メーカーは推奨していませんが、現場では問題なく使用されています。]
リバスタッチ/イクセロン[リバスチグミン]の特徴:メマリーとの違い
リバスタッチ、イクセロンを含めたコリンエステラーゼ阻害薬は、陽性症状を強める働きがあります。
そのため、認知症患者の中でもおとなしいタイプに向いています。
また、レビー小体型認知症[DLB]の症状である幻視に対しても有効性があると報告されています。
メマリーのようなNMDA受容体拮抗薬は、陰性症状を強める働きがあります。
そのため、認知症患者の中でも興奮や怒りっぽいタイプに向いています。
さらに最近では、アルツハイマー型認知症患者における食欲低下に対する効果も報告されています。
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]の副作用
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]は、軽度及び中等度アルツハイマー型痴呆(認知症)の進行抑制の治療薬として、2011年に承認された薬です。
主な副作用としては、適用部位紅斑[43.1%]、適用部位掻痒感[40.2%]、接触性皮膚炎[29.0%]、適用部位浮腫[13.9%]、嘔吐[9.0%]、悪心[8.7%]、適用部位皮膚剥脱[6.1%]及び食欲不振[5.6%]などが挙げられます。
リバスタッチ、イクセロンパッチは貼付剤であるため、血中濃度の急激な上昇がなく、消化器系の副作用がアリセプトやレミニールの1/3程度と言われています。
そのため、リバスタッチ、イクセロンパッチは、食欲低下や消化器症状を伴う方により適した製剤と言えるのです。
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]の貼る場所・部位
リバスタッチ、イクセロンパッチの副作用で一番多いのは皮膚のかぶれです。
このかぶれを防止するためには、3つのポイントがあります。
- 貼付部位の変更
- ヘパリン類似物質軟膏・ローション[ヒルドイド]を使った保湿
- モメタゾンフランカルボン酸エステルローション[フルメタ]を使った処置
貼付部位については、背部・上腕部・胸部しか承認上は推奨されていません。
しかし、臨床経験上、かぶれやすい場合は太ももや足の裏に貼ることでかぶれを解消できる場合があることが報告されています。[実際に在宅の現場でそのような方法をこれまでも見てきました]
また、保湿剤を事前に塗布する方法も有用です。
保湿剤の中では尿素製剤よりもヘパリン類似物質軟膏・ローション[ヒルドイド軟膏やヒルドイドローション]を塗布した方が、かぶれの発現が少なかったと報告されています。
[Prog.Med, 36:1561-1569,2016]
リバスタッチ、イクセロン[リバスチグミン]の禁忌
- 特になし