不整脈の治療薬、ソタコール[ソタロール]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ソタコール[ソタロール]:不整脈治療薬
ソタコール[ソタロール]は、他の抗不整脈薬が無効か、又は使用できない場合の不整脈に使用される治療薬です。
不整脈とは、過労やストレス・アルコール・発熱・貧血・睡眠不足など、さまざまな要因で起こります。
これらが、心臓の刺激伝導系に異常をもたらし、脈が乱れると考えられています。
また、加齢によっても不整脈は起こりやすくなり、すべての不整脈が悪いというわけではありません。
このため、不整脈時には心電図を取ることによって、病的な不整脈か生理的な不整脈かを見極めるのです。
心電図では、P波は心房の興奮を、QRS波は心室の興奮を、T波は心室の興奮終了を表しています。
心電図の波形を見ることで、心臓のどの部分が不整脈の原因か、どの不整脈のタイプかを診断するのです。
不整脈は脈の乱れ方により3つのタイプに分かれます。
- 心房頻拍
- 心房細動・粗動
- 発作性上室性頻拍
- 心室頻拍
- 心室細動
- WPW症候群
1分間に100回以上の脈を打つことを指し、電気が異常に早く作られたり、電気の通り道が多くできて小さい波を打つことが原因です。
小渕総理や長嶋茂雄監督は、心房細動によってできた血栓が脳梗塞を引き起こしたと言われています。
- 洞不全症候群
- 房室ブロック
1分間に50回以下や脈の間隔が2秒以上間隔が空くことを指し、電気が作られなかったり、電気の通り道の途中で途絶えたりすることが原因です。
- 心房性期外収縮
- 心室性期外収縮
突然異常な電気信号が出現して、心臓が早く反応してしまう不整脈です。
異常な電気信号が心房から出たのか?心室から出たのかで2つに分けられます。
ソタコール[ソタロール]の作用機序、特徴
不整脈の治療では、心電図の検査が必須になります。
例えば、心室性不整脈の2つの場合を見てみましょう。
右室の期外収縮の場合は、先に右室の波が現れ、左室の期外収縮の場合は、先に左室の波が確認できます。
このように、心臓の異常部分によって異なる波形が心電図に現れるのです。
不整脈の主原因:リエントリー
通常、心筋内はマイナスの電位に傾いており、心筋が収縮する際にNa+イオンの心筋内への移動が起こり、プラスの電位に傾きます。[脱分極]
このときの電位を活動電位といいます。
心筋が活動電位に達すると、外からの刺激を一定時間感じなくなります。
このときの時間を不応期といいます。
その後、K+イオンの心筋外への移動が起こり、再びマイナスの電位に戻るのです。[再分極]
この過程において、通常とは異なる経路に電気刺激が伝わることをリエントリーというのです。
不整脈治療薬の中で、心室細動、心室性頻拍、肥大型心筋症に伴う心房細動の治療薬のひとつがソタコールです。
不整脈の治療薬は、古くからあるVaughan Williams分類と呼ばれる作用機序による分類分けがされています。
不整脈の治療では、心筋のイオンの伝導を遮断したり、不応期を延長して外からの刺激[リエントリー]を遮断する方法がとられます。
ソタコールは、K+チャネル遮断作用を主作用とするⅢ型の不整脈治療薬です。
現在使用される分類方法である、Sicilian Ganbit(シシリアン ガンビット)分類では、K+チャネルに加え、β受容体遮断作用を持ちあわせているとされています。
ソタコールは、
- K+チャネルを遮断することで、心筋の興奮時間を延長します。
- β受容体を阻害することで、心筋の興奮を抑制します。
この作用により、活動電位の立ち上がりを遅らせ、活動電位持続時間・不応期を延長するのです。
やっくん
ソタコール[ソタロール]は、心臓のK+チャネルを阻害し、β受容体を阻害することで、不応期[活動電位時間]を延長し、不整脈症状を改善します。
ソタコール[ソタロール]の副作用
ソタコール[ソタロール]は、生命に危険のある心室頻拍、心室細動で他の抗不整脈薬が無効か、又は使用できない場合の治療薬として、1999年に発売された薬です。
主な副作用として、徐脈[1.6%]、心不全[1.4%]、心室性頻脈[1.1%]、洞性徐脈[0.6%]、心電図QT延長[0.6%]、肝機能異常[0.5%]などが報告されています。
ソタコールは、外国の持続性心室頻拍又は心室細動の患者を対象とした臨床試験において、Torsades de pointesを[4.1%]に発現したと報告されています。
Torsades de pointesを含む新たな不整脈の発現に注意することと警告されています。
Torsades de pointes[トルサードポアン]の原因
トルサードポアンとは、心筋細胞のイオンチャネルが何らかの原因により異常を来たし、再分極時間が延長することが原因です。
イオンチャネルの異常とは、不整脈の治療薬で引き起こされることが多く、特に第Ⅲ群が多いとされています。
ソタコール[ソタロール]の禁忌
- 心原性ショック[心原性ショックの症状を悪化させるおそれがあります。]
- 重度のうっ血性心不全
[心収縮力低下により、心不全を悪化させるおそれがあり、また、催不整脈作用により持続性心室頻拍、心室細動を起こしやすい。] - 重篤な腎障害(クレアチニン・クリアランス< 10mL/min)
[本剤は腎臓から排泄されるため、血中濃度が高くなることにより、重篤な副作用が発現するおそれがあります。] - 高度の洞性徐脈(50拍/分未満、高度の洞不全)
[本剤は洞結節抑制作用があり、これが催不整脈の誘因となるおそれがあります。] - 高度の刺激伝導障害(Ⅱ~Ⅲ度の房室ブロック、高度の洞房ブロック等)
[刺激伝導障害が悪化し、完全房室ブロック、心停止を起こすおそれがあります。] - 気管支喘息、気管支痙攣[気管支拡張抑制作用を有するためです。]
- 先天性又は後天性のQT延長症候群
[過度のQT延長により催不整脈の誘因となるおそれがあります。] - 心筋抑制のある麻酔薬(シクロプロパン等)
- アンカロン注[アミオダロン]
- アベロックス(モキシフロキサシン塩酸塩)
- レビトラ(バルデナフィル塩酸塩水和物)
- バイアグラ、レバチオ(シルデナフィルクエン酸塩)
- フェアストン(トレミフェンクエン酸塩)
- イムセラ、ジレニア(フィンゴリモド塩酸塩)