胃ろうとは?
在宅医療の現場では胃ろう患者に出会うことは少なくありません。
胃ろうとは、おなかに栄養や薬液を注入する穴を開けた状態のことを指します。
PEG[Percutaneous endoscopic Gastrostomy]=経皮内視鏡的胃ろう造設術とも呼ばれます。
胃ろうが適応となる患者とは?
消化管がどのくらい機能しているか、栄養剤をどのように摂取するかによって以下のように分類分けされます。
胃腸機能が働く場合は経腸栄養剤を、胃腸機能が働かない場合は静脈栄養剤[輸液]が適応されます。
経腸栄養剤はさらに、消化機能の必要の有無で半消化態栄養剤、消化態栄養剤に分かれます。
胃ろうが適応となるのは、経口摂取が難しく胃腸機能が働く場合となります。
静脈栄養剤[輸液]は、2週間など短期的に末梢静脈から入れるもの、長期的に中心静脈から入れるものに分かれます。
経腸栄養剤のメリット:静脈栄養剤との違い
- 感染のリスクが低い
- 水分量の調節が容易
- 腸管を使うため、腸管免疫能が維持できる
経腸栄養剤のメリットは大きく3つに分かれます。
中でも静脈栄養においては、カテーテル挿入部位で起こる感染が一番のデメリットとなります。
細菌が血管内に侵入し、敗血症で亡くなる方も多いため、できるだけ早い経腸栄養剤への切り替えが推奨されています。
胃ろうカテーテルの違い、特徴
胃ろうに使うカテーテルは、次の4種類から選択します。
ボタン型カテーテルの特徴①③
- 触れる部分が少ないため、自己抜去されにくい
- 衛生的
- 体型が変わると合わなくなる
チューブ型カテーテルの特徴②④
- 容易に触れるため、自己抜去しやすい
- 体型が変わってもそのまま使える
バルーン型カテーテルの特徴①②
- 交換期間の目安は1ヶ月
- 生理食塩水が必要
- 痛みが少ない
バンパー型カテーテルの特徴③④
- 交換期間の目安が6ヶ月と長い
- 自己抜去されにくい
経腸栄養剤の種類と使い分け
胃ろうに使う経腸栄養剤は保険が使える医薬品から、すべて自費の市販品まで何百種類もあります。
市販品には、糖尿病患者向けのものや腎機能低下患者向けなどより細かな使い分けが行われます。
一方で、医薬品では前述した半消化態栄養剤、消化態栄養剤に分かれます。
これらは、腸管において消化・吸収がしっかりとされているかによって使い分けます。
腸管免疫能を維持するためにも、可能な限り半消化態栄養剤を使用することが求めれられるためです。
腸管における消化・吸収能が十分でない場合に消化態栄養剤を使用します。
それぞれの栄養剤については以下で解説しています。
半消化態栄養剤:腸での消化が必要
消化態栄養剤:腸での消化が不要
在宅における胃ろうでは、投与スピードを速くしたいという要望をよく頂きます。
その場合は、液体の経腸栄養剤ではなく、半固形型の経腸栄養剤が適しています。
胃ろうに適した栄養剤は半固形型栄養剤
従来の液体の経腸栄養剤を胃瘻から注入する場合は、200mLを2時間程度ゆっくりと時間を掛けて注入してきました。
しかしこの時間の間、訪問看護師の方が付きっきりで患者さんの状態を見ることは難しいですよね。
通常、経口から食事を摂った時は、口腔内でよく噛むことで[咀嚼して]半固形上にし、胃の中で貯留・撹拌・排出されます。
そのため液体の経腸栄養剤を注入しても、生理的な胃の蠕動運動が起こらず、消化吸収能に影響が出やすいと考えられます。
半固形化することで次のメリットがあることが文献等から報告されています。
- 投与時間の短縮
- 通常の食事摂取に近い
- 誤嚥性肺炎の減少
- 下痢・嘔吐の副作用の減少
- 高血糖やダンピング症候群の減少
- 栄養剤が漏れにくい
そこで、粘稠剤としてアルギン酸と寒天を加えることで半固形化し、ラコールNF配合経腸用半固形剤が開発されたのです。
ラコールNF半固形剤は、胃の中に食事をためて腸へ送り込むという通常の食事に近い蠕動運動や消化・吸収が期待されます。
また、1バッグ300gに対し、6-9分という短時間で注入することができます。