肺高血圧症の治療薬として使用されるフローラン注[エポプロステノール]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
フローラン注[エポプロステノール]:肺高血圧症治療薬
フローラン注[エポプロステノール]は、肺高血圧症で使用される治療薬です。
肺高血圧症とは、肺の血管が狭くなることで、心臓が通常よりも強い力で血液を肺に押し出し、最終的に心臓に負担がかかり心機能が低下する疾患です。
肺高血圧症の原因
肺高血圧症の原因は、はっきりとわかっていません。
他の疾患が原因である場合もありますが、患者の半分以上が原因不明であるとされています。
肺血圧症で右心不全が起こる理由:体循環と肺循環
心臓は、4つの部屋[右心房、右心室、左心房、左心室]に分かれています。
心房は静脈から血液を受け取る部屋、心室は動脈へ血液を送り出すポンプ機能を持つ部屋です。
血液は、上大静脈と下大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身→上大静脈と下大静脈→…という順に循環しています。
肺動脈が何らかの原因によって、血管が狭くなると[狭窄]、右心室がそれを補うために多くの血液を送り込もうとします。
これにより、右心室に負担がかかり、早期に治療しなければ右心不全を起こしてしまうのです。
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肺動脈への血液量が少なくなる→肺動脈血流の低下→低酸素脳症
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大静脈からの血液が多すぎて受け取りことができなくなる(うっ血)→浮腫や腹水
フローラン注[エポプロステノール]の作用機序、特徴
肺高血圧症は、肺動脈が何らかの影響で狭く狭窄していることが原因です。
そのため、肺動脈血管を拡張する薬=血管拡張薬が通常使用されます。
フローラン注は、抗血小板作用や血管拡張作用を持つ、プロスタグランジンI2製剤です。
フローラン注の抗血小板作用
血小板の凝集は、血小板内のCa2+量が増えることによって起こります。
Ca2+の量はPGI2受容体の働きによって制御されています。
PGI2受容体が、アデニル酸シクラーゼを抑制しているため、通常体内ではcAMP量が減少し、血小板内のCa2+量が増加します。
その結果、血小板の凝集が起こるのです。
フローラン注は、PGI2受容体に作用することで、アデニル酸シクラーゼを活性化し、血小板の凝集を抑制します。
やっくん
フローラン注[エポプロステノール]は、PGI2受容体に作用することで、血小板内Ca2+量が減少し、血小板の凝集を抑制します。
フローラン注の血管拡張作用
血管の拡張は、血管内のcAMP量が増えることによって起こります。
フローランは、cAMPを増やし、プロテインキナーゼの活性化、血管拡張作用を示します。
やっくん
フローラン注[エポプロステノール]は、PGI2受容体に作用することで、cAMP量が増加し、血管を拡張します。
フローラン注[エポプロステノール]の副作用
フローラン注[エポプロステノール]は、肺動脈性肺高血圧症の治療薬として、1999年に発売された薬です。
主な副作用として、潮紅[7.4%]、頭痛[6.6%]、出血、下痢、低血圧[4.9%]、顎痛[4.7%]などが挙げられます。
重大な副作用として、過度の血圧低下、低血圧性ショック、徐脈、意識喪失・意識障害等が報告されており、十分観察するよう警告されています。
フローラン注[エポプロステノール]の禁忌
- 右心不全の急性増悪時
[本剤の血管拡張作用によりその病態をさらに悪化させるので、カテコールアミンの投与等の処置を行い、状態が安定するまでは投与しないこととされています。] - 重篤な左心機能障害
[本剤の血管拡張作用により、その病態をさらに悪化させるおそれがあります。] - 重篤な低血圧[本剤の血管拡張作用により、その病態をさらに悪化させるおそれがある。]
- 用量設定期(投与開始時)に肺水腫が増悪した患者