脂質異常症治療薬、プラルエント[アリロクマブ]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
プラルエント[アリロクマブ]:脂質異常症[高脂血症]治療薬
プラルエント[アリロクマブ]は脂質異常症[高脂血症]の中でも家族性高コレステロール血症に使用される治療薬です。
脂質異常症は、糖尿病や高血圧と同様に、メタボリックシンドロームの診断基準に加えられる生活習慣病です。
血液中のLDL-コレステロール[悪玉コレステロール]やトリグリセリド[中性脂肪]が多かったり、HDL-コレステロール[善玉コレステロール]が少なくなっている状態を指します。
これらは、特に自覚症状がありませんが、主に血管が硬くなることで動脈硬化を引き起こしたり、血管の損傷や詰まりが起こりやすくなります。
そのため、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脳出血などの血管に関連する疾患のリスクを高めるのです。
脂質異常症[高脂血症]の原因
脂質異常症は、生活習慣病と言われることから、その原因は食事と運動です。
食事では、脂のイメージが高い肉類だけでなく、ご飯やパン、スイーツなどの糖質も原因のひとつです。
なぜなら、必要以上の糖質は体内の脂肪合成に使用されるからです。
また、運動はカロリーの消費のみでなく、悪玉LDL-コレステロールを減らし、善玉HDL-コレステロールを増やす働きがあります。
脂質異常症[高脂血症]の原因:家族性高コレステロール血症[FH]
脂質異常症の中でも生活習慣に関係なく、子供の頃からLDL-コレステロールが高値を示す家族性高コレステロール血症もあります。
私たちは、父親由来のコレステロール調節遺伝子と母親由来のコレステロール調節遺伝子と2つの遺伝子を受け継いでいます。
その際にどちらも変異した遺伝子を受け継ぐ場合をヘテロ接合体、どちらかの変異した遺伝子を受け継ぐ場合をホモ接合体と言います。
ホモ接合体 | ヘテロ接合体 | |
---|---|---|
発生頻度 | 100万人に1人 | 500人に1人 |
検査値 | LDL-C=500mg/dL以上 Total-C=600mg/dL以上 |
LDL-C=180-400mg/dL |
症状 | 男性では30-50歳、女性では50-70歳の間に冠動脈疾患を発症する場合が多い | 将来、心筋梗塞などの冠動脈疾患にかかりやすく、死亡率が10倍程度高くなる |
特定疾患・難病指定 | あり | なし |
プラルエント[アリロクマブ]の作用機序、特徴
脂質異常症の患者は、その原因である食事の改善や適度な運動が推奨されています。
それでも、十分にコレステロールや中性脂肪の数値が改善しない場合に、薬を服用します。
家族性高コレステロール血症[FH]の場合は生活習慣の改善だけでなく、薬物治療も積極的に導入されます。
プラルエントは、生体内におけるコレステロールの肝臓内への取り込みを促進することで、脂質異常症の治療薬として使用されます。
プラルエントの作用機序の前に、コレステロールが体内でどのように合成されるのかを確認してみましょう!
家族性高コレステロール血症[FH]の原因
血液中のコレステロールは、通常肝臓内や組織内へ取り込まれることで循環しています。
肝臓や組織に取り込む際に働くのが、LDL受容体です。
家族性高コレステロール血症[FH]の方は、このLDL受容体が欠損したり変異していることが原因です。
特に肝臓のLDL受容体がうまく働かないため、LDLの循環が上手くいかず血中に留まったままになるのです。
通常、LDLがLDL受容体に結合すると、肝臓内へ取り込まれLDLが分解され、LDL受容体は再利用されます。
肝臓が作る酵素のひとつにPCSK9と呼ばれるLDLの分解に関わる酵素があります。
PCSK9がLDL受容体に結合すると、LDLやLDL受容体と共に肝臓内に取り込まれます。
PCSK9は、LDLだけでなくLDL受容体も含め分解させるため、LDL受容体の再利用ができなくなるのです。
プラルエント[アリロクマブ]は、PCSK9の作用を阻害することで、肝臓に取り込まれたLDL受容体が再利用され、最終的にLDL-コレステロールの取り込みを促進するのです。
やっくん
プラルエント[アリロクマブ]は、LDL受容体の分解に関わるPCSK9を阻害することで、LDL-コレステロールの肝臓への取り込みを促進します。
プラルエント[アリロクマブ]の副作用
プラルエント[アリロクマブ]は、脂質異常症の中でも家族性高コレステロール血症の治療薬として、2016年に発売された薬です。
主な副作用としては、注射部位反応[11.4%]などが報告されています。
プラルエント[アリロクマブ]の禁忌
- 特になし