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調剤薬局による医薬分業は医療費増加の原因のひとつ

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これまで医薬分業が進められてきましたが、最近ではその在り方が適切ではないといった報道が多いです。

医薬分業が進められた経緯と現状をまとめています。

調剤薬局が病院やクリニック前に乱立している理由

調剤薬局の数が増えてきたのはここ最近の話です。

1989年[平成元年]では約35,000軒しかありませんでした。

しかし、2017年においては、約60,000軒とコンビニエンスストアよりも数が多いことが話題になっています。

また薬局数は減らすと言われていますが、2017年においても若干の増加となっていました。

なぜこれほどまでに調剤薬局数が伸びたのでしょうか?

それは、利益率の高さが原因です。

一般的には調剤薬局=お薬を渡すと思われていますが、ふたを開けてみると多くのサービス料を取っています。

薬局業界では、このサービス料を調剤技術料と呼んでいます。

診療報酬や薬局経営を考える上ではこの“調剤技術料”が重要なキーワードとなりますので、覚えておきましょう!

サービス料の例

  • 処方箋を受け取る
  • 薬を混合する
  • 患者にヒアリングをして記録に残す
  • ジェネリック医薬品を勧める
  • 24時間連絡が取れる体制を作る

これらは、本来薬剤師がすべき仕事内容であり、かつ、報酬が発生する仕事内容でもあります。

サービス料であるため、基本的には人件費しかかかりません。

つまり、非常に利益を出しやすい分野のため、儲かるからということで薬剤師ではない多くの薬局経営者が誕生したのです。

また、調剤薬局の数が増えたことは、そもそも、国が「医薬分業」といった取組みを推進したことも大きく関係しています。

医薬分業が調剤薬局で推し進められてきた理由

薬局機能

「処方箋を病院でもらい、調剤薬局で薬を貰う」

今でこそ当たり前となっていますが、昔は違いましたよね。

私が小さい頃も、病院やクリニックに行って、その場でお薬を頂いていました。
[これを院内処方と呼んでいます。]

しかし、院内処方にはさまざまなデメリットがありました。

院内処方のデメリット

  • 医師自ら調剤し薬を患者に渡すため、医師の診察にかけることのできる時間が減る
  • 医師が一人で行うため、ミスに気付きにくい
  • 他院でもらっている薬がわからず、薬が重複することがある

実際に、私が薬剤師になった後も院内処方のクリニックにお世話になりましたが、1度だけ薬の数の間違いや飲み方の間違いがあり指摘したことがありました。

そこで、医師と薬剤師を別々の機関にすることで、上記のデメリットを無くす取組みが生まれました。

これが医薬分業[院外処方]です。

医薬分業のメリット

  • 医師は処方箋を書くだけでいいため、医師の負担が軽減される
  • 薬局で重複投与の防止や相互作用の確認ができる
  • 病院薬剤師は、院内の患者に集中することができる

これらのメリットから、国は処方箋を発行する医療機関に報酬[処方箋料]を与え、医薬分業を推進してきたのです。

医薬分業が進められてきたホントの理由:薬価差[薬価差益]の縮小

しかし、これらのメリット・デメリットはあくまでも表向きの理由です。

実際は、薬価差[薬価差益]の縮小が一番の理由であると考えられています。

薬価差の縮小[薬価差益]とは、薬の仕入れ値と保険請求する薬価の差額で純粋な利益の部分になります。

1993年においては19.6%あった薬価差益が、2011年には8.4%まで縮小しているのです。[グラフ紫折れ線グラフ]

薬価差年次推移

[厚生労働省資料改変]

納入価と薬価については、分かりにくいかもしれませんので、イラストを使って簡単に説明してみましょう!

院内処方院外処方利益率違い

院内処方が主流の時代は、納入価が低かったため、薬価差[利益]=薬価ー納入価となり薬を処方すればするほど儲かっていた時代でした。

現在の院外処方のシステムでは、納入価が高いことがほとんどで薬価差がほとんど無くなっています。

これは、2年に1回改定される薬価が市場における納入価=市場価格をベースに定められるようになったことが影響しています。

具体的には、厚生労働省が実際の納入価を調べ、その納入価に合わせて薬価を設定するということです。

薬価改定市場価格

医薬品メーカーが以前の院内処方の時のように、納入価を低くすると、2年に1回の薬価改定において大きく薬価が下がってしまうため、医薬品メーカーが納入価の値下げを渋るようになったのです。

そして、薬価には消費税分も含まれているため、最近ではほとんど利益がなくなってしまったのです。

また、処方箋発行の手数料として、医師が処方箋を出す際に請求できる処方箋料の大幅な上乗せもありました。

MEMO

つまり、病院やクリニックで薬を処方しても儲からないが、処方箋を書くと在庫も持たずに処方箋料という手数料が貰えるため、医薬分業が進んでいったのです。

これにより、1989年[平成元年]には10%程度であった医薬分業率は、2015年には70%近くまで上昇しています。

医薬分業の見直しが進められている理由

2015年には約70%が院外処方となりましたが、医薬分業はどちらかと言うと医師や薬剤師視点の取組みです。

医薬分業

そのため、お薬を貰う患者さん視点ではデメリットになることがあります。

医薬分業のデメリット

  • 病院へ行った後、調剤薬局へ行かなければならないため、時間がかかる
  • 病院からは診察代、調剤薬局からはお薬を請求されるため、二重にお金がかかる
  • 調剤薬局によっては、薬をおいてない場合がある
  • 医薬分業にインセンティブを与えているため、医療費が増加する

一番のデメリットは、二重にお金がかかることで医療費が増加している点です。
これは、調剤薬局で発生する報酬は、病院内で発生する報酬より高く設定されていることも影響しています。

そのため、医薬分業の適切なあり方ということで、現在、調剤薬局の再編が図られているのです。

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