調剤薬局の機能の一つは、地域の健康相談窓口中です。
認知症を早期発見し、多職種連携によって早い段階から治療できる環境が求められています。
実際に認知症疑い患者と遭遇した場合の多職種連携の流れをまとめてみました。
認知症疑い患者の早期発見
認知症を疑うきっかけとなった症状で多いのは、以下の4つです。
- 忘れ物や物忘れが多くなった
- 時間や日にちがわからなくなった
- 仕事や家事に支障が出てきた
- クレジットカードや銀行通帳の管理ができなくなった
[認知症の人と家族の会 アンケート,2014.9]
これらの症状を家族が遭遇した際と報告されています。
しかし、65歳以上の4割が単身あるいは高齢者世帯であると言われています。
そのため、なかなか家族内で「認知症ではないか?」と疑う機会が少なく、治療に至るまでの期間が長くなってしまい、認知症初期での発見が遅れがちになります。
調剤薬局におけるかかりつけ機能では、患者さんに継続的な支援ができるため、ちょっとした変化に気づくことができます。
例えば、以下のような経験が薬局内であるかもしれません。
- いつもの薬と同じにもかかわらず、話がかみ合わない場合
- 支払いがスムーズにできず、お札しか出さない場合
- いつもと雰囲気[服装や髪のセット、化粧など]が異なる場合
このような出来事に遭遇した場合、認知症の初期症状ではないか?と疑うことが求められています。
場合によっては、なるべく早くかかりつけ医と連携を取ることや、介護関係者との連携、家族への連絡を必要に応じて行います。
認知症の疑いがあった場合の多職種連携
調剤薬局において、認知症の疑いがあった場合は主に次の2つの連携を考慮します。
1.かかりつけ医への報告
薬剤師は、“診断”を行うことはできません。
そのため、トレーシングレポートのような形でもいいですし、単なるFAXでも構わないので、かかりつけ医に具体的にどのようなやり取りで認知症の疑いがあると感じたかを報告します。
・いつもの薬と同じにもかかわらず、話がかみ合わない場合
・支払いがスムーズにできず、お札しか出さない場合
・いつもと雰囲気[服装や髪のセット、化粧など]が異なる場合
このようなやり取りがありましたので、認知症初期症状によりお薬の服用がしっかりできていないかもしれません。
先生の方でも、服薬状況を含め念のため確認をお願い致します。
といった感じでしょうか?
文面としては、診断はできない点に留意して、間接的にお伝えしたほうがいいかと思います。
2.地域包括支援センターへの相談
地域包括支援センターでは、一般の方向けにも認知症相談を行っています。
介護サービスを受けれるかについても対応してくれるので、継続的な支援が可能です。
本人または、家族に同意を取り地域包括支援センターに情報提供を行います。
また、すでに介護保険を使用している場合は、担当のケアマネジャーが付いています。
地域包括支援センターではなく、ケアマネジャーに現状を報告しましょう!
このように医師やケアマネジャーとの連携が求められますが、実際に医師やケアマネジャーが薬剤師に期待することもまとめてみました。
医師が薬剤師に望むこと
- 薬局窓口での認知症への疑いへの気づき
- 地域の資源へのつなぎ
- 家庭での服薬の課題、問題の拾い上げ→処方への提案
- 服薬情報を多職種への提供
ケアマネジャーが薬剤師に望むこと
- 利用者の薬の管理
- 保管方法、粉砕の可否、副作用の初期症状を介護側にも
- 医者に医療ケアの改善点を伝える
- 医療と介護をつなぐパイプ役
- サービス担当者会議、退院時カンファレンスに参加し発言
認知症患者に薬剤師としてサポートするには?
認知症患者では、薬の渡し方について考慮しなければなりません。
- 薬の服用数が多い場合は、一包化
- 薬の服用回数が多い場合は、処方変更提案
- 飲み間違いが多い場合は、お薬BOXやカレンダーへのセット
- 嚥下機能が低下している場合は、粉砕や貼付剤への剤形変更
また、非薬物療法も認知症治療において重要です。
規則正しい生活を行い、おしゃべりやゲーム、お手伝いをすることで、イライラや不安を取り除きます。
アロマセラピーやカラオケ、音楽療法、お絵かき、書道などは認知症リハビリとして活用されています。