高血圧の治療薬として使用されるARBのひとつにディオバン[バルサルタン]があります。
今回は、ディオバン[バルサルタン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ディオバン[バルサルタン]:高血圧治療薬
ディオバン[バルサルタン]は高血圧症の治療に使用される治療薬です。
高血圧は、糖尿病や脂質異常症と同様に、メタボリックシンドロームの診断基準に加えられる生活習慣病です。
血圧が高いと何がダメなのか?
血圧とは血管にかかる圧力であり、血液量[心拍出量]と血管の硬さ[抵抗]で決まります。
血圧=心拍出量×血管抵抗
血液の量が多くなると心臓から多くの血液を送り出さなければならないため、心臓に負担がかかります。
血管抵抗は血液が流れにくい状態であり、この原因の多くは動脈硬化です。
動脈が硬くなることで、血流が悪くなり、腎臓や脳、心臓の血管が詰まりやすくなるのです。
また、脳血管障害は夜中から早朝における血圧が高いときに起こりやすいことがわかっています。
ゆえに、高血圧は、特に自覚症状がありませんが、心臓への負担や動脈硬化を引き起こし、心不全や腎不全、脳梗塞、心筋梗塞などの血管に関連する疾患のリスクを高めるのです。
高血圧の原因
高血圧は、生活習慣病と言われますが、実は、高血圧患者の90%は具体的な原因がわかっていません。
この高血圧を本態性高血圧といいます。
高血圧を引き起こす要因としては、遺伝、肥満、運動不足、塩分、アルコールの摂り過ぎ、ストレス、喫煙などがあげられます。
ディオバン[バルサルタン]の作用機序、特徴
高血圧の患者は、その要因のひとつである食事の改善や適度な運動が推奨されています。
それでも、十分に血圧の数値が改善しない場合に、薬を服用します。
ディオバンは、生体内における昇圧物質アンジオテンシンⅡの受容体を遮断することで、高血圧症の治療薬として使用されます。
ディオバンの作用機序の前に、アンジオテンシンが体内でどのように合成・作用するのかを確認してみましょう!
アンジオテンシンの生合成・作用機序
アンジオテンシンは、肝臓で生成されたアンジオテンシノーゲンから合成されます。
アンジオテンシノーゲンは、腎臓から分泌されたレニンによりアンジオテンシンⅠ、肺から分泌されたアンジオテンシン変換酵素[ACE]により昇圧物質アンジオテンシンⅡに変換されます。
アンジオテンシンⅡにはAT1受容体に作用することで、直接的な血管収縮作用とアルドステロンを介した循環血液量を増やす作用によって血圧を上昇させます。
これらの経路を、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系と呼びます。
ディオバンの作用機序は、AT1受容体の遮断によって、アンジオテンシンⅡの作用を阻害することです。
やっくん
ディオバン[バルサルタン]は、アンジオテンシンⅡの作用するAT1受容体を阻害することで、アンジオテンシンの作用を阻害します。
ディオバン[バルサルタン]の特徴:作用は中程度
ディオバン[バルサルタン]はARBの中で作用は中程度の製剤です。
商品名 | 成分名 | 強さ |
アジルバ | アジルサルタン | 最強 |
アバプロ/イルベタン | イルベサルタン | 強 |
オルメテック | オルメサルタン | 強 |
ディオバン | バルサルタン | 中 |
ニューロタン | ロサルタン | 弱 |
ブロプレス | カンデサルタン | 強 |
ミカルディス | テルミサルタン | 強 |
ディオバン[バルサルタン]は、6-10時間と半減期が短い点が特徴です。
また、一般的に食後に服用しますが、食事の影響を受けやすく空腹時に比べ食後はCmaxが37%低下、AUCは45%低下するといったデータがあります。
ディオバン[バルサルタン]の副作用
ディオバン[バルサルタン]は、高血圧症の治療薬として、2000年に発売された比較的古い薬です。
主な副作用としては、めまい[0.8%]、貧血[0.5%]、頭痛[0.4%]などが報告されています。
主な臨床検査値異常は、血中尿酸値上昇[0.5%]、γ-GTP上昇[0.5%]、BUN上昇[0.5%]が報告されています。
ディオバンの副作用で高カリウム血症が起こる理由
ディオバンを含むAT1受容体遮断薬[ARB]は、特に腎機能障害の患者に対して、高カリウム血症が副作用で起こることが知られています。
腎臓の集合管では、K+の尿中への排泄にアルドステロンが関与しています。
ディオバンは、アルドステロンの分泌を阻害するため、腎臓でのK+の排泄が阻害されるのです。
ディオバン[バルサルタン]の禁忌
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
- アリスキレンを投与中の糖尿病患者