カリウムは、ヒトの体内で作られない必須ミネラルとして多くの働きを持っています。
中でも、筋肉の収縮・弛緩を調節したり、腎臓においてナトリウムを尿中へ含ませる働きが重要です。
このページでは、血液検査値のひとつ、カリウム[K]の読み取り方を薬の副作用との関連性を含め解説しています。
カリウムの2つの働き
カリウムの働き①:細胞の脱分極に関与
筋肉が機能するには、Na+やK+、Ca2+などのイオン類の働きが必要です。
細胞内がプラスに傾く[=脱分極]ことによって、Ca2+、K+などが細胞内に流入し、筋肉が収縮します。
K+は、約98%が細胞内に多く存在しており、細胞内と細胞外の電位バランスを調節しています。
K+が少なければ細胞内をプラスに傾けることが難しく、脱分極を起こしにくいため筋肉が正常に働かなくなります。
これにより、重度の低カリウム血症になると筋肉が働かないため、呼吸筋や心臓、腸の筋肉が麻痺し、呼吸筋麻痺、不整脈、腸閉塞を引き起こすのです。
カリウムの働き②:ナトリウムの排泄に関与
カリウムは腎臓の集合管において、Na+-K+交換輸送系に関与しています。
ヒトの腎臓は、Na+を保持し、K+を排泄するようにできています。
つまり、Na+-K+交換輸送系は、通常Na+を再吸収し、K+を排泄する交換系です。
尿中のK+はNa+の再吸収を抑制します。
K+が少なければNaの再吸収が促進されるため、血中のNa+濃度が高くなり高血圧になるのです。
カリウムと食品
カリウムは食品中に多く含まれ、バナナやアボカド、さつまいもなどの果物、野菜に多く含まれています。
- バナナ1本 540mg
- アボカド1/2個 504mg
- さつまいも小1本 470mg
- かぼちゃ2口大 258mg
- ホウレンソウ1株 138mg
- ピーマン1/2個 137mg
通常の食事をしていれば不足することはありませんが、果物・野菜を食べる習慣がない方はカリウム値が低くなることがあります。
また、食事量が減る高齢者ではカリウム値が低くなる傾向があります。
血清カリウム[K]の基準値は、3.6~4.8mmol/Lです。
[日本臨床検査協議会:共用基準範囲2014より]
高カリウム血症の原因
前述のように腎臓から排泄されるため、腎機能低下患者ではカリウム値が高くなることに注意しなければなりません。
その他、カリウム値が高くなる要因としては、薬剤性のK排泄障害や細胞内から細胞外へのK移行が増えること、溶血によって血球からKが放出されることなどが挙げられます。
高カリウム血症を疑う疾患
- 腎不全
- 低アルドステロン症
- 代謝性アシドーシス
- インスリン欠乏
- 溶血
高カリウム血症を疑う薬剤
- K保持性利尿薬[アルダクトン、セララ]
- NSAIDs
- ACE阻害薬[レニベース、ロンゲス]
- ジギタリス製剤
- β遮断薬
ACE阻害薬の副作用で血清カリウム値が上昇する理由
レニベース[エナラプリル]やロンゲス[リシノプリル]などのACE阻害薬は、ACEを阻害することでアルドステロン分泌を抑制します。
アルドステロンは尿中へのカリウム分泌を促進するため、アルドステロン分泌が抑制されると血中にカリウムが留まり、血清カリウム値が上昇するのです。
低カリウム血症の原因
食事によるカリウム摂取量低下の他、薬剤性のK排泄促進や細胞外から細胞内へのK移行が増えることなどが挙げられます。
低カリウム血症を疑う疾患
- 食事量低下
- 嘔吐、下痢、大量の発汗
- 代謝性アルカローシス
低カリウム血症を疑う薬剤
- ループ利尿薬[ラシックス、ダイアート]
- インスリン
- グリチルリチン含有製剤[甘草含有漢方薬、グリチロン]
- 炭酸水素ナトリウム
[参考:検査値×処方箋の読み方 他]