新規てんかん治療薬として使用される薬のひとつがビムパット[ラコサミド]です。
今回は、ビムパット[ラコサミド]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ビムパット[ラコサミド]:てんかん治療薬
ビムパット[ラコサミド]は、Naチャネルに働く新しい作用機序のてんかん薬として使用されています。
てんかんは、2回目のてんかん発作が起きた後に、発作の再発率が高いことがわかっています。
そのため、一般的には、2回目の発作が起きた後に治療を開始します。
[てんかん治療ガイドライン2010より]
てんかん発作は、脳の大部分が興奮して起こる全般発作と、脳の一部が興奮して起こる部分発作の2つに分かれます。
全般発作は強直間代性発作、欠神発作、ミオクロニー発作の3つに、部分発作は単純部分発作と複雑部分発作の2つにさらに分かれます。
強直間代性発作 |
欠神発作 |
部分発作 |
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フェニトイン [アレビアチン、ヒダントール] |
○ |
× |
○ |
フェノバルビタール [フェノバール] |
○ |
– |
○ |
プリミドン[フェノバール] |
○ |
– |
○ |
カルバマゼピン [テグレトール、レキシン] |
○ |
– |
○ |
トリメタジオン |
× |
○ |
– |
エトスクシミド |
× |
○ |
– |
ベンゾジアゼピン系 [リボトリール] |
○ |
○ |
○ |
バルプロ酸ナトリウム [デパケン、セレニカR] |
○ |
○ |
○ |
ゾニサミド[エクセグラン] |
○ |
○ |
○ |
ビムパット[ラコサミド]の作用機序、特徴
てんかん発作は、脳の中にある電気信号を送る細胞が異常に興奮したために起こる発作です。
ここでいう異常に興奮した状態とは、興奮系のイオンが過剰になっている状態、あるいは抑制系のイオンが不足している状態をいいます。
興奮系のイオンとは、Na+イオンやCa2+イオン、抑制系のイオンとはCl–イオンを指します。
昔から使用されている抗てんかん薬は、Na+受容体に働き、Na+イオンの流入を抑制することで、脳内の興奮を抑制していました。
このNa+受容体の抑制には、急速な不活性化と緩徐な不活性化があるとビムパットとIFには記載されています。
アレビアチンやテグレトール、レキシン、ラミクタールなどの従来の抗てんかん薬は急速な不活性化に、ビムパットは緩徐な不活性化に働きます。
不活性化の時間が短いと、すぐにNa流入が可能となります。
つまり、興奮状態に必要なNa+受容体数が多くなりてんかん発作を起こしやすくなるのです。
ビムパットは、従来の抗てんかん薬と同様にNa+受容体の不活性化に働きますが、不活化時間が長いことが特徴です。
不活化時間が長いと、Na流入が可能となるのに時間がかかります。
つまり、興奮状態に必要なNa+受容体数が少ないままになり、てんかん発作を起こしにくくするのです。
やっくん
ビムパット[ラコサミド]は、Na+受容体の不活化時間を長くすることで、Na+の流入を防ぎ、脳細胞の異常な興奮を抑制します。
ビムパット[ラコサミド]は、薬物代謝酵素の誘導や阻害の影響を受けにくいことが特徴です。
ただし、腎排泄型薬剤のため、高齢者など腎機能低下患者に対しては投与量の調節が必要となります。
ビムパット[ラコサミド]の副作用
ビムパット[ラコサミド]は、抗てんかん薬として2016年と、比較的最近誕生した薬です。
代表的な副作用としては、浮動性めまい[27.5%]、傾眠[10.4%]、頭痛[5.9%]、嘔吐[5.9%]、悪心[5.5%]が挙げられます。
ビムパット[ラコサミド]の禁忌
- 重度の肝機能障害のある患者[使用経験がなく、ラコサミドの血中濃度が上昇するおそれがあります。]