筋萎縮性側索硬化症[ALS]の治療薬として使用されるリルテック[リルゾール]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
リルテック[リルゾール]:筋萎縮性側索硬化症[ALS]治療薬
リルテック[リルゾール]は、筋萎縮性側索硬化症[ALS]の治療に使用される筋収縮薬です。
筋萎縮性側索硬化症[ALS]とは?
筋萎縮性側索硬化症は手や足、顔など身体のあらゆる部位を自由に動かせなくなる疾患です。
筋萎縮性側索硬化症は、英名でAmyotrophic Lateral Sclerosisと呼ばれるため頭文字を取ってALSと呼ばれます。
三浦春馬主演のテレビドラマ「僕のいた時間」で取り上げられていたため、名前だけはご存知の方も多いかと思います。
ALSは言葉のごとく筋肉の疾患です。
ALSの説明に入る前に、身体を支配している筋肉について確認してみましょう。
筋肉は主に骨格筋・心筋・平滑筋の3つに分類されます。
このうち、骨格筋・心筋は筋線維に横紋[縞模様]が見られるため合わせて横紋筋と言われます。
- 骨格筋は、自分でトレーニングをして増やせるいわゆる筋肉であり、自分の意思で自由に動かすことができます。
- 心筋は、字のごとく心臓の筋肉であり、自律神経に支配されています。
- 平滑筋は、血管や気管支、胃や腸などの内臓を動かしている筋肉であり、自律神経に支配されています。
骨格筋のように、自分の意思で動かすことのできる筋肉を随意筋、心筋や平滑筋のように自律神経に支配されている筋肉を不随意筋と言います。
ALSの原因は、随意筋を支配している運動ニューロン[運動神経]がうまく働かないことが原因です。
そのため、自分の意思で動かせない不随意筋には影響がなく、心臓が止まったり、食べ物を消化できなくなるということはありません。
逆に、随意筋である骨格筋に影響を及ぼすため、初期症状として物をつかみにくくなり、舌が動かなくなる発語障害を生じます。
症状が進行すると、食べ物を飲み込めなくなり[嚥下障害]、呼吸が不十分になる[呼吸不全]などの症状が進行し、予後が悪い疾患となっています。
リルテック[リルゾール]の作用機序、特徴
リルテックは、ニューロン[神経細胞]を保護するALSの治療薬です。
リルテックの作用機序に入る前に、末梢における筋肉の収縮機構について確認してみましょう。
単シナプス反射、多シナプス反射
外部から刺激や脳からの指令によって、筋肉は緊張[収縮]します。
刺激や指令の伝達は神経細胞を介して伝達し、脊髄において単一経路で情報伝達をする単シナプス反射や複数の経路で情報伝達をする多シナプス反射が行われます。
そこで、運動神経[α-運動ニューロンやγ-運動ニューロン]に興奮が伝わります。
α-運動ニューロンは直接骨格筋を収縮します。
γ-運動ニューロンは筋紡錘の感受性を高め、Ⅰa繊維からα-運動ニューロンに興奮を伝えることで間接的に骨格筋を収縮します。
ALSでは、上記のα-運動ニューロン[運動神経]、γ-運動ニューロン[運動神経]の働きが徐々に破たんしていきます。
この運動神経の破たんの原因のひとつが、神経伝達物質であるグルタミン酸の過剰産生であるとされています。
リルテックは、神経終末においてグルタミン酸の遊離阻害作用を示し、これら運動ニューロン[運動神経]の保護作用を示します。
やっくん
リルテック[リルゾール]は、神経終末においてグルタミン酸の遊離を阻害し、運動ニューロン[運動神経]を保護することで、ALSの進行を遅らせます。
このように、リルテックは症状の進行を遅らせる治療薬であるため、ALSの根本的な治療というわけではありません。
リルテック[リルゾール]の副作用
リルテック[リルゾール]は、筋萎縮性側索硬化症[ALS]の治療薬として、1999年に発売された薬です。
主な副作用としては、ALT(GPT)上昇[6.9%]、AST(GOT)上昇[6.6%]、悪心、γ-GTP上昇[各3.8%]などが報告されています。
リルテック[リルゾール]の禁忌
- 重篤な肝機能障害
- 妊婦又は妊娠している可能性