虚血性心疾患の発作改善・予防薬として使われるカルビスケン[ピンドロール]はβ遮断薬のひとつです。
カルビスケン[ピンドロール]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
カルビスケン[ピンドロール]:狭心症治療薬
カルビスケン[ピンドロール]は、狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患の発作改善、予防に使用される治療薬です。
虚血性心疾患とは、心筋内に血液が循環しない心筋虚血を呈する疾患です。
これは、心筋に血液を送る冠動脈が狭窄・閉塞することによって起こります。
酸素供給が一過性に不足した状態を狭心症[いわゆる酸欠状態]、さらに病態が進行し冠動脈が閉塞した状態を心筋梗塞[いわゆる壊死状態]といいます。
狭心症は3つのタイプに分かれます。
坂道を歩いたり、階段を上ったりといった運動によって酸素消費量が増え発症します。
主に動脈硬化が原因です。
寝ているときなどに、血管がけいれんすることによって酸素供給量が減り発症します。
発作時ST上昇を伴う、強く長い胸痛を伴う狭心症です。
カルビスケン[ピンドロール]の作用機序、特徴
狭心症発作時は、数分~数十分の胸痛を伴うため、発作治療薬と発作予防薬に分かれます。
これらは、狭くなってしまった血管を広げて酸素供給量を増やしたり、心機能の働きを抑制して酸素消費量を減らす薬が使用されます。
狭心症治療薬の中で、心臓の働きを抑制し酸素消費量を減らす薬のひとつがカルビスケンです。
β受容体は、β1・β2・β3受容体が確認されており、β1受容体は心臓に、β2受容体は気管支に、β3受容体は脂肪細胞に主に存在します。
カルビスケンは、心臓のβ1受容体を遮断することで、心臓の働き[心拍数や心拍出量]を弱め、酸素消費量を減らし、冠血管狭窄による酸素供給不足を改善します。
やっくん
カルビスケン[ピンドロール]は、心臓のβ1受容体を阻害することで、アドレナリン・ノルアドレナリンの働きによる心機能亢進を抑制し、酸素消費量を減らします。
カルビスケン[ピンドロール]の特徴:非選択性のβ遮断薬
カルビスケンはβ1受容体だけでなく、β2、β3受容体までも阻害作用を示します。
気管支のβ2受容体を遮断すると、気管支拡張の収縮や冠血管の収縮に働きます。
また、脂肪細胞のβ3受容体を遮断すると、脂肪代謝の阻害に働きます。
特にβ2受容体を遮断すると、酸素供給量がさらに減ってしまうため、安静型狭心症をさらに悪化させてしまいます。
以上の副作用が生じやすいことから、臨床では年々使用されるケースが少なくなりつつあります。
カルビスケンの特徴2:ISA[内因性交感神経興奮作用]
カルビスケンは、ISA[+]であるため、交感神経が興奮していない場合は、β受容体を少しだけ刺激するのです。
ISA[+]の薬は、β受容体刺激作用があることから、徐脈など心機能が低下している高齢者には向いており、狭心症など心機能に負担を与える方には向いていません。
カルビスケン[ピンドロール]の副作用
カルビスケン[ピンドロール]は、高血圧・狭心症の治療薬として、1973年に承認された薬です。
主な副作用としては、頭痛・頭重感[0.5%]、脱力・けん怠感[0.5%]、不眠[0.5%]、悪心・嘔吐[0.4%]、脳貧血様症状[0.4%]、めまい[0.4%]、ふらつき感[0.4%]などが挙げられます。
カルビスケン[ピンドロール]の禁忌
- 気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者
[気管支を収縮し、喘息症状が誘発又は悪化するおそれがあります。] - 糖尿病性ケトアシドーシス、代謝性アシドーシス
[アシドーシスによる心筋収縮力の抑制を増強するおそれがあります。] - 高度の徐脈(著しい洞性徐脈)、房室ブロック(Ⅱ、Ⅲ度)、洞房ブロック、洞不全症候群
[心刺激伝導系を抑制し、症状を悪化させるおそれがあります。] - 心原性ショック、肺高血圧による右心不全、うっ血性心不全
[心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがあります。] - 異型狭心症[症状が悪化するおそれがあります。]
- 低血圧症[心機能を抑制し、症状が悪化するおそれがあります。]
- 重症の末梢循環障害(壊疽等)[症状が悪化するおそれがあります。]
- 未治療の褐色細胞腫
- 異型狭心症
- メレリル(チオリダジン)[メレリルの代謝が阻害されます。]
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人