筋弛緩薬として使用されるダントリウム[ダントロレン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ダントリウム[ダントロレン]:筋弛緩薬
ダントリウム[ダントロレン]は、痙性麻痺やこむら返りなど筋肉の緊張によって起こる疾患の治療薬です。
ダントリウムは、筋弛緩薬の中でも末梢性の骨格筋弛緩薬に分類されます。
筋肉は主に骨格筋・心筋・平滑筋の3つに分類されます。
このうち、骨格筋・心筋は筋線維に横紋[縞模様]が見られるため合わせて横紋筋と言われます。
- 骨格筋は、自分でトレーニングをして増やせるいわゆる筋肉であり、自分の意思で自由に動かすことができます。
- 心筋は、字のごとく心臓の筋肉であり、自律神経に支配されています。
- 平滑筋は、血管や気管支、胃や腸などの内臓を動かしている筋肉であり、自律神経に支配されています。
骨格筋のように、自分の意思で動かすことのできる筋肉を随意筋、心筋や平滑筋のように自律神経に支配されている筋肉を不随意筋と言います。
つまり、肩こりや腰痛など、私たちが動かすことのできる筋肉は骨格筋が緊張している状態にあるのです。
それでは、骨格筋の緊張とはどのような状態のことでしょうか?
骨格筋が緊張するとは、骨格筋の収縮状態が長く続くことを意味します。
私たちの身体は、骨格筋が収縮・弛緩を繰り返すことで動いています。
しかし、長時間のデスクワークや読書、運転など身体を動かさない状態が続くと、骨格筋が収縮したままの状態が続きます=骨格筋の緊張
この骨格筋の緊張状態が長く続くと、毛細血管を圧迫してしまいます。
つまり、血液の流れが滞ってしまうため、筋肉中へ送り込む酸素や栄養の量が減ってしまい筋肉が疲労して肩こりや腰痛を引き起こすのです。
そのため、肩こりや腰痛の治療には筋肉の緊張状態をほぐすためのマッサージや温熱療法が行われるのです。
ダントリウム[ダントロレン]の作用機序、特徴
ダントリウムは、骨格筋の緊張をほぐす筋弛緩薬です。
筋弛緩薬は脳からのシナプス反射に作用する中枢性の筋弛緩薬と、筋小胞体からのCaイオンの遊離を抑制する末梢性の筋弛緩薬に分かれます。
ダントリウムは、末梢性の筋弛緩薬であり、上記のカルシウムイオンの遊離抑制作用を示します。
ダントリウムの作用機序に入る前に、末梢における筋肉の収縮機構について確認してみましょう。
骨格筋収縮の仕組み、メカニズム
骨格筋の収縮には次の3つのステップが必要です。
- ニコチン性アセチルコリン受容体の活性化による脱分極
- 筋小胞体からカルシウムイオンの遊離
- アクチン・ミオシンのATP消費による結合
神経伝達物質であるアセチルコリンが、ニコチン性アセチルコリン受容体に作用します。
ニコチン性アセチルコリン受容体はナトリウムチャネルを形成しているため、ナトリウムイオンの細胞内流入が起こり脱分極を起こします。
一方、神経終末のアセチルコリンはコリンエステラーゼによって分解され、コリンとなって再利用されます。
脱分極による活動電位がT管に伝わり、T管にあるカルシウムチャネルが開口します。
カルシウムチャネルと連動し、筋小胞体内のリアノジン受容体が開口し、カルシウムイオンが遊離するのです。
筋小胞体から遊離したカルシウムイオンは骨格筋中のトロポニンと結合します。
トロポニンは、アクチン中のミオシン結合部位の外側をトロポミオシンが覆うようにすることで筋肉の収縮を抑制しています。
カルシウムイオンがトロポニンと結合すると、トロポミオシンが変形しミオシン結合部位がむき出しの状態になります。
この状態になって初めて、ミオシンとアクチンが結合しATPを消費することで筋肉が収縮します。
ダントリウムは、1~3のうち2の部分に大きく関わっています。
ダントリウムは、T管から筋小胞体への情報伝達機構に直接働きかけ、筋小胞体からのカルシウムイオンの遊離を抑制すると考えられています。
やっくん
ダントリウム[ダントロレン]は、筋小胞体からのカルシウムイオンの遊離を抑制し、末梢において骨格筋弛緩作用を示します。
ダントリウム[ダントロレン]の副作用
ダントリウム[ダントロレン]は、痙性麻痺及び全身こむら返りの治療薬として、1981年に発売された薬です。
主な副作用としては、脱力感[6.13%]、全身倦怠感[2.19%]、ふらふら感[2.01%]、食欲不振[1.55%]、眠気[1.45%]、悪心[1.24%]、下痢[1.16%]などが報告されています。
ダントリウム[ダントロレン]の禁忌
- 閉塞性肺疾患あるいは心疾患による、著しい心肺機能低下
[本剤の筋弛緩作用により、症状が悪化するおそれがあります。] - 筋無力症状[本剤の筋弛緩作用により、症状が悪化するおそれがあります。]
- 肝疾患[本剤による肝障害が疑われる症例が報告されています。]