B型肝炎の治療薬、テノゼット[テノホビル]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
テノゼット[テノホビル]:B型肝炎治療薬
テノゼット[テノホビル]は、B型肝炎の治療に使用される治療薬です。
B型肝炎とは?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス[HBV]が主に血液や体液を介して感染する肝臓の疾患です。
そのため、医療現場における針刺し事故や予防接種時の注射器の使いまわし、性的接触が主な原因とされています。
HBVに感染すると、その多くは治癒しますが、一部が慢性肝炎や劇症肝炎となり、肝硬変、肝臓がん、死亡などの経過をたどることがあるのです。
HBVの予防にはワクチンと消毒が行われます。
HBVはHCVと異なりワクチンによる予防接種が可能なウイルスです。
医療従事者では、HBVワクチンの接種が労働安全衛生法によって義務付けされています。
また、HBVが含まれている可能性のある血液、体液は消毒しなければなりません。
HBVはエンベロープを持つウイルスであるため、中水準以上の消毒薬である消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムが効果的です。
テノゼット[テノホビル]の作用機序、特徴
B型肝炎の治療では、その原因となるB型肝炎ウイルス[HBV]の増殖を抑制する薬が使用されます。
インターフェロン製剤やセロシオンなど免疫系に作用する薬が使用されてきましたが、ウイルスに直接作用するわけではないため、十分な効果が得られない場合もありました。
テノゼットは、HBVの複製過程を直接阻害するB型肝炎の治療薬です。
ゼフィックス[ラミブジン]耐性ウイルス、ヘプセラ[アデホビル]耐性ウイルスに対しても効果がある場合が多く、テノゼット自身耐性が生じにくい薬です。
テノゼットの有効成分であるテノホビルは、細胞内に取り込まれリン酸化されます。
このテノホビル二リン酸の構造は、デオキシアデノシン5’-三リン酸(dATP)と構造が類似しています。
そのため、dATPと競合的に作用しDNAポリメラーゼによって取り込まれます。
しかし、テノホビル二リン酸には-OH基がないため、テノホビル二リン酸を取り込むと、これ以上DNAを伸長することができません。
テノゼットはウイルスの複製過程において、DNAポリメラーゼに対する競合的拮抗作用とDNA伸長停止作用の2つの作用によりHBVの増殖を防ぐと考えられています。
やっくん
テノゼット[テノホビル]は、ウイルスの複製過程に作用しdATPと競合的に拮抗し、取り込まれた後はDNAの伸長を阻止することで、HBVの増殖を抑制します。
テノゼットはヘプセラやバラクルードと比較して耐性ウイルスを生じにくい点が特徴です。
テノゼット[テノホビル]の副作用
テノゼット[テノホビル]は、B型肝炎の治療薬として、2014年に発売された薬です。
主な副作用としては、肝機能検査値異常(AST、ALT 及びγ-GTP 増加等)[4.9%]、クレアチニン増加[2.8%]、アミラーゼ増加、リパーゼ増加及び悪心[各2.1%]、腹痛[1.4%]などが知られています。
また、B型肝炎に対する治療を終了した患者で、肝炎の急性増悪が報告されています。
そのため、投与終了後少なくとも数ヶ月間は患者の臨床症状、検査値の観察を十分に行い、再治療も検討するよう警告されています。
テノゼット[テノホビル]の禁忌
- 特になし