肝硬変患者の低アルブミン血症患者に使用する、リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]:低アルブミン血症改善薬
リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]は、非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症患者のための栄養剤です。
非代償性肝硬変とは?
非代償性肝硬変とは、B型肝炎やC型肝炎などによってたどる一連の肝疾患[慢性肝炎→肝硬変→肝臓がん]の中でも、肝硬変状態の進んだ患者さんのことを指します。
それに対し、ほとんど自覚症状のない軽度の肝硬変を代償性肝硬変と言います。
肝硬変状態では、不可逆的に肝臓が破壊されています。
そのため、肝臓本来の働きである、「有害物質の解毒作用」や「アミノ酸代謝」が不十分になります。
有毒物質の中では、タンパク質摂取による窒素含有アミノ酸から生じるアンモニアの解毒ができなくなります。
アンモニアは血液脳関門を通過するため、脳内に侵入し神経細胞を破壊するのです。
また、アミノ酸代謝が上手く行われなくなると、体内のアミノ酸バランスが崩れてしまいます。
脳内の神経伝達物質は、分岐鎖アミノ酸[BCAA]が前駆体であるため、神経伝達物質のバランス異常を引き起こします。
このような過程で、肝不全時には脳の神経細胞や神経伝達物質に障害を引き起こし、脳が正常に作用しなくなるのです[=肝性脳症」。
非代償性肝硬変では、肝性脳症以外にも、以下の症状を伴う場合があります。
- ビリルビンの代謝低下による黄疸
- タンパク質の合成能低下による低アルブミン血症、腹水貯留・浮腫
- 血液凝固因子の減少による出血
リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]の作用機序、特徴
肝性脳症を含む非代償性肝硬変の治療では、食事による栄養療法、および、原因となるアンモニアの除去、アミノ酸バランスの是正が行われます。
リーバクトは、非代償性肝硬変の患者に適した分岐鎖アミノ酸を配合した低アルブミン症改善薬として使用されます。
低アルブミン血症とは、血清アルブミン値3.5g/dL以下を指しています。
非代償性肝硬変患者では、分岐鎖アミノ酸[BCAA=バリン・ロイシン・イソロイシン]が不足傾向にあり、芳香族アミノ酸[AAA=チロシン、フェニルアラニン]が過剰傾向にあることがわかっています。
つまり、Fischer比[BCAA/AAA]が低い傾向にあるのです。
現在は、分岐鎖アミノ酸を投与することで、アミノ酸インバランスを改善することが確認されています。
そのため、リーバクトは、次のアミノ酸を含有しています。
アミノ酸名 | 含有量 |
---|---|
L-イソロイシン | 952mg |
L-ロイシン | 1,904mg |
L-バリン | 1,144mg |
リーバクトに含まれる3つの分岐鎖アミノ酸の割合は、
「イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu):バリン(Val)=1:2:1.2」となっています。
この1:2:1.2の配合比が血漿アルブミン値上昇の是正に最も優れていることが確認されています。
やっくん
リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]は、非代償性肝硬変患者で不足している分岐鎖アミノ酸を配合することで、低アルブミン血症を改善します。
リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]の副作用
リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]は、非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症改善薬として、1996年に発売された薬です。
2011年には顆粒タイプに加えゼリータイプが発売されています。
主な副作用としては、腹部膨満感[3.9%]、便秘[2.7%]、下痢[1.5%]、そう痒[12%]、嘔気、嘔吐[0.9%]などが知られています。
リーバクト[バリン、ロイシン、イソロイシン]の禁忌
- 先天性分岐鎖アミノ酸代謝異常
[メープルシロップ尿症においては痙攣、呼吸障害等があらわれるおそれがあります。]