調剤薬局数は伸び続けていますが、現在成熟期、今後衰退していくと考えられています。
就職を考える薬学生や転職を考える薬剤師が知っておくべき薬局業界の現状を紹介します。
調剤薬局は成熟期を迎え、今後衰退する
調剤薬局に限らず、商品やサービスのビジネスモデルには寿命があります。
マーケティングの際には、導入期から始まり成長期、成熟期、衰退期をたどる成長曲線がたびたび使用されます。
調剤薬局については、1974年-1991年の17年間が導入期、2008年までが成長期、2025年までが成熟期と狭間先生は予測しています。
現に、2013年時点では、調剤薬局の数・処方箋枚数は増え続けていますが[左図]、1件あたりの処方箋枚数は2010年以降減少傾向です[右図]。
一般的に成熟期では、商品やサービスの認知度が高く、他社との競合が起こります。
そのため、価格競争が起こり薄利多売へとシフトするのです。
その後、衰退期を迎えた商品・サービスはどうなるのでしょうか?
衰退期を迎えると赤字経営になり利益が出なくなります。
そのため、その事業から撤退するしかないのです。
最近では、以前にも増してM&Aの案内、案件が増えてきています。
しかし、この成熟期・衰退期を乗り越えた商品・サービスがないわけではありません。
成熟期・衰退期を乗り越える方法
成熟期・衰退期を乗り越えるには、新たな付加価値を付けたり、別の商品・サービスを提供するなどのイノベーションが必要になります。
この過程を変革期と言います。
身近なものでは、今私が使用しているパソコンはどうでしょうか?
昔は高価なデスクトップパソコンでしたが、現在はお手軽な価格で購入できるようになりました。
付加価値としては、テレビ機能やDVD・ブルーレイ再生機能、本体と画面の一体化などでしょうか。
また、よりコンパクトにまとまったノートパソコンやiPadなどのタブレット端末が別の商品として開発されました。
少しジャンルは異なりますが、iPhoneなどのスマートフォンもOSを備えているため、パソコンの一種と言っていいでしょう!
それでは、成熟期を迎えた調剤薬局はどのような変革を行っているでしょうか?
調剤薬局の変革期
残念ながら、現時点では大きな変革はまだ起こっていないと考えられます。
しかし、2016年の診療報酬改定で変革の方向性は決まったのではないでしょうか?
それは、新たに評価対象に加わった”かかりつけ薬剤師機能”です。
これまでクリニックや病院に近いからといった理由で薬局を選んでおり、門前調剤薬局と言った言葉が一般的に使用されていました。
今後は○○薬剤師さんがいるから、気軽に健康相談ができるからなどの薬局の品質面が問われる時代に変わるでしょう!
このかかりつけ薬剤師が重要であることは、2015年に導入されたマイナンバー制度からも確認できます。
処方箋の電子化や患者情報など医療のICT化推進に伴い、2018年から試験的にマイナンバーで管理することが決まりました。
さらに、マイナンバーを使用したかかりつけ医やかかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師の登録を2020年までに目指すと言われているのです。
これらを踏まえ、ただ処方箋を受け取るだけの調剤薬局から、在宅医療や健康サポートを積極的に行うかかりつけ薬局へと変革する必要があると考えられます。
こういった流れを受けて、ローソンやファミリーマートといったコンビニエンスストア業界が、薬局業界・介護業界への新たな展開を始めています。
こういった他業種の機能を取り入れることも、生き残るための変革のひとつになると考えられます。