前立腺癌の進行抑制を目的とした治療薬、プロスタールL[クロルマジノン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
プロスタール[クロルマジノン]:前立腺癌治療薬
プロスタール[クロルマジノン]は、前立腺癌の進行抑制を目的とした治療薬として使用されています。
前立腺とは、男性が持つ膀胱の下部にある生殖器であり、精液を作ったり、精子を守ったりといった働きをしています。
この前立腺が何らかの影響で大きく膨れがってしまい、尿が出にくくなってしまう病気が前立腺肥大症です。
また、前立腺癌は前立腺細胞が何らかの原因で以上増殖する疾患です。
前立腺癌の原因
前立腺癌の原因は、はっきりとはわかっていません。
遺伝が最も重要な危険因子であると言われています。
また、動物性脂肪を好む欧米食との関連性も示唆されています。
早期発見の方法として、PSA検査や直腸診が日本だけでなく世界的に実施されています。
PSA検査
PSAとは、prostate specific antigen[前立腺特異抗原]の略であり、血液中にPSAタンパクという物質がどれだけ含まれるかを見た値です。
健常人では、PSAが血液中に含まれることはほとんどありません。
しかし、前立腺に何かしら疾患がある場合、血液中にPSAが浸出し、血液検査での測定が可能となります。
前立腺癌だけでなく、前立腺肥大症や前立腺炎の方でも数値が大きくなるため、前立腺癌の確定診断とまではいきません。
50歳以上になると前立腺癌の罹患率が急激に上昇することから、50歳以上の方は、1-3年毎に1回のPSA検査が推奨されています。
[国立がん研究センターの資料をもとに作成]
プロスタール[クロルマジノン]の作用機序
前立腺癌は、精巣や副腎から分泌される男性ホルモン[アンドロゲン]の働きで進行することがわかっています。
男性ホルモンの中でも、テストステロンが5α還元酵素で代謝された、ジヒドロテストステロン[DHT]の量が増えると前立腺細胞が増殖し、大きくなることがわかりました。
これら男性ホルモンをターゲットにした前立腺癌の薬がプロスタールです。
プロスタールは、ジヒドロテストステロン[DHT]の作用を競合的に阻害します。
やっくん
プロスタール[クロルマジノン]は、アンドロゲン受容体においてジヒドロテストステロン[DHT]と競合することで、抗アンドロゲン作用を示し、前立腺癌に伴う前立腺細胞の異常増殖を抑制します。
プロスタール[クロルマジノン]の副作用
プロスタール[クロルマジノン]は、前立腺肥大症の治療薬として1981年に、前立腺癌の薬として1983年に承認された薬です。
主な副作用としては、女性型乳房[3.0%]、肝臓・胆管系障害[1.5%]、浮腫[1.3%]などが挙げられます。
プロスタールL[クロルマジノン]の重大な副作用:肝障害
プロスタールの服用により、劇症肝炎等の重篤な肝障害による死亡例が報告されています。
そのため、少なくとも投与後3ヶ月までは1ヶ月に1回の肝機能検査およびそれ以降は定期的な肝機能検査を行い、副作用の発現[食欲不振、悪心・嘔吐、全身けん怠感、そう痒、発疹、黄疸など]がないか十分に観察すること注意喚起されています。
プロスタール[クロルマジノン]の禁忌
- 重篤な肝障害・肝疾患
[代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがあります。]