各種感染症の治療薬、ロセフィン静注［セフトリアキソン］の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ロセフィン静注［セフトリアキソンナトリウム］：抗菌薬
ロセフィン静注［セフトリアキソンナトリウム］は、各種感染症の治療薬として使用されています。
細菌・ウイルスとは？
細菌とウイルスでは、構造が全く異なるため増殖過程も異なります。
| 細菌 | ウイルス | |
|---|---|---|
| 構造 |
細胞質+細胞膜+細胞壁 |
核酸+タンパク質の外壁 |
| 大きさ | 1μm | 1/1000μm |
| 増殖過程 | 自分の力で増殖 ［栄養環境でないと生きられない］ |
生物に寄生して増殖 ［環境の影響を受けにくい］ |
| 薬物療法 | 抗生物質［抗菌薬］ | 抗ウイルス薬 |
細菌の構造は、真ん中に核を持ち、核は細胞質、細胞膜、細胞壁に覆われており複雑です。
タンパク質の合成に必要なリボソームや小胞体、エネルギー代謝に必要なミトコンドリアを持つものもあります。
ウイルスの構造は、真ん中に核を持ち、核はカプシドと呼ばれるタンパク質の殻とエンベロープと呼ばれる膜に覆われているのみであり単純です。
やっくん
このように、複雑な構造をしている細菌は自分の力で数を増殖することが可能ですが、単純な構造をしているウイルスは誰かの力を借りなければなりません。
食中毒の原因菌のひとつである腸炎ビブリオとノロウイルスを比較してみました。
条件：常温で24時間放置
- 腸炎ビブリオ［細菌］→約1億個まで増殖します。
- ノロウイルス［ウイルス］→1個のままです。
よって、細菌による感染症の対策とウイルスによる感染症の対策は別物として考える必要があるのです。
感染症とは？
私たちの身の回りには、さまざまな細菌やウイルスなどの微生物が潜んでいます。
しかし、これらの微生物にすぐに感染するかと言うとそうではないですよね。
感染が成立するには、抵抗力と感染力どちらが強いかが重要になってきます。
新生児や高齢者は抵抗力が弱いため、少量の細菌やウイルスで感染してしまいます。
抗生物質や抗ウイルス薬では、微生物そのものを死滅させる作用を持つもの、微生物の増殖過程を阻害するものに分かれます。
抵抗力が弱くなり微生物がかなり増殖した状態で薬を飲んでも効果がない場合がありますので、注意しましょう！
ロセフィン静注［セフトリアキソンナトリウム］の作用機序、特徴
ひと昔前は、感染症にかかってしまっても対症療法しか選択できず、多くの患者が命を落としていました。
感染症の治療薬として、ペニシリンが発見されて以降多くの抗菌薬［抗生物質］が開発されています。
ロセフィン静注は、セフトリアキソンナトリウムを有効成分とする注射用抗菌薬です。
ロセフィン静注はグラム陽性菌だけでなく、セラチア属などのグラム陰性菌にも作用し、広範囲な抗菌スペクトルを持っているため、第三世代セフェム系抗菌薬に分類されます。
緑膿菌には効果を示さないため注意が必要です。
ロセフィン静注は、ペニシリン系同様細胞の細胞壁に作用します。
細胞壁は主にN-アセチルグルコサミン・N-アセチルムラミン酸による糖鎖同士をアラニンやグルタミン酸によるペプチドが架橋結合したペプチドグリカンでできています。
ロセフィン静注は、ペプチドグリカンの合成に必要なペプチドグリカン合成酵素の作用を阻害します。
ペプチドグリカン合成酵素は、PBP［ペニシリン結合タンパク質］とも呼ばれます。
ロセフィン静注は、PBPと直接結合することによりペプチドグリカン［細胞壁］の生合成を阻害することで、抗菌作用を示します。
やっくん
ロセフィン静注［セフトリアキソンナトリウム］は、ペプチドグリカン合成酵素と結合することで、細胞壁の生合成を阻害し、抗菌作用を示します。
ロセフィンの特徴
ロセフィン静注の特徴は、次の2つです。
- 腎機能低下患者に使いやすい
→尿中に約55％、胆汁中に約45％が排泄されるため、高度の腎機能障害者であっても1日1gまでの投与が可能となっています。 - 半減期が長く投与回数が少ない
→半減期が成人の場合7-8時間、小児の場合5-6時間と長いため、1日1-2回と少ない投与回数で使用されます。
ロセフィン静注［セフトリアキソン］とカルシウム含有薬との混注、同時投与
ロセフィン静注［セフトリアキソン］は、カルシウムを含有する注射剤や輸液とは一緒に使用ができません。
その理由は、肺、腎臓、心臓、肝臓などにセフトリアキソンを成分とする結晶が生じる可能性があるためです。
この結晶が原因で、特に新生児の死亡例が報告されています。
死亡例のほとんどがグルコン酸カルシウム［商品名ではカルチコール］を主成分とするカルシウム剤を使用していました。
この報告を受けて、ロセフィン静注とカルシウム含有薬において以下の3点を注意しなければなりません。
- 生後28日以内の新生児において、カルシウム含有の注射剤や輸液を使用している場合は、ロセフィン静注を使用しない
- 生後28日を過ぎた患者において、カルシウム含有の注射剤や輸液を使用している場合は、洗い流すなどしてロセフィン静注との同時投与を避ける
- カルシウム含有の注射剤や輸液とは、カルチコールのようなカルシウム製剤だけでなく、エルネオパやパレセーフといった栄養剤も含む
ロセフィン静注［セフトリアキソンナトリウム］の副作用
ロセフィン静注［セフトリアキソンナトリウム］は、第三世代セフェム系抗生物質として、1986年に承認された薬です。
主な副作用としては、AST（GOT)上昇［1.6％］、ALT（GPT)上昇［1.6％］、Al-P上昇［0.6％］、発疹［0.6％］、下痢［0.5％］などが挙げられます。
ロセフィン静注［セフトリアキソンナトリウム］の禁忌
- 高ビリルビン血症の未熟児、新生児
