にきびの治療薬、ディフェリンゲル[アダパレン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ディフェリンゲル[アダパレン]:尋常性ざ瘡[にきび]治療薬
ディフェリンゲル[アダパレン]は、主に尋常性ざ瘡[にきび]に使用される治療薬です。
一般的にはにきびとも呼ばれる尋常性ざ瘡は、
- 毛穴の閉塞
- 皮脂分泌の促進
- ニキビ菌の異常増殖
が原因とされています。
角化細胞の増殖や、角化異常などにより毛穴が詰まり出します。
皮脂が外に排出されなくなることで、毛包が大きくなり皮膚表面が隆起します。
この状態を面皰と呼びます。
男性の成長期・思春期では、男性ホルモンの分泌量が増えます。
男性ホルモンの作用で皮脂腺が増大し、皮脂分泌が促されます。
アクネ菌を始めとしたニキビ菌は皮脂を好み、酸素の少ない環境で増殖しやすい特徴があります。
アクネ菌は、好中球の遊走作用や皮脂の分解を行うことで、毛包壁の炎症・破壊作用[紅色丘疹]を示すのです。
ディフェリンゲル[アダパレン]の作用機序
尋常性ざ瘡の治療では、外用の抗炎症薬や抗菌薬、内服の抗菌薬などが使用されます。
どの薬剤を使用するかは、ざ瘡の状態によって異なります。
[画像はディフェリンゲルサイトより]
症状が軽度の際から炎症を伴う重度の場合まで、ディフェリンゲル[アダパレン]、べピオゲル[過酸化ベンゾイル]などの抗炎症薬が推奨されます。
一方で、アクアチムを始めとした外用の抗菌薬は炎症性皮疹の場合には推奨されますが、面皰のみの非炎症性皮疹では推奨されません。
内服の抗菌薬は製剤によって推奨度が異なっており、炎症性皮疹の場合にはミノマイシンやビブラマイシンが推奨度が高い一方で、クラビットやクラリス、クラリシッドは推奨度が低くなっています。
ディフェリンゲルは、レチノイン酸受容体[RARγ]に作用することで角化細胞に働きかける尋常性ざ瘡の治療薬です。
レチノイン酸受容体[RAR]はα、β、γの3つのサブタイプが存在します。
いずれのRARもレチノイドX受容体[RXR]とヘテロダイマーを形成することで、標的遺伝子の転写を制御しています。
中でもRARγは、表皮や組織内の上皮中に多く発現しています。
ディフェリンゲルがRARγに作用すると、表皮や上皮中の遺伝子転写が促進され、最終的にトランスグルタミナーゼの発現を抑制します。
トランスグルタミナーゼは、架橋を形成することで角化を促進する酵素です。
トランスグルタミナーゼの発現が抑制され、角化細胞の分化が抑制されると角層が薄くなるため、面皰や皮疹部分の閉塞が改善されます。
やっくん
ディフェリンゲル[アダパレン]は、レチノイン酸受容体[RARγ]に作用することで、角化細胞分化を抑制し、皮疹を減少させます。
ディフェリンゲル[アダパレン]の副作用:赤み・刺激感・乾燥について
ディフェリンゲル[アダパレン]は、尋常性ざ瘡の治療薬として、2008年に発売された薬です。
主な副作用としては、皮膚乾燥[56.1%]、皮膚不快感[47.6%]、皮膚剥脱[33.5%]、紅斑[21.9%]、そう痒症[13.2%]、湿疹[2.0%]、ざ瘡[1.3%]。接触性皮膚炎[1.3%]、皮膚刺激[1.1%]などの皮膚症状が知られています。
ディフェリンゲルの作用機序は角化細胞の分化抑制によって角質層を薄くすることです。
角層が薄くなることによって、毛穴の詰まりを取り除く一方で、正常な肌の角層も薄くなってしまいます。
角層は水分を保持し刺激から守るバリア機能を持っているため、皮膚が赤くなったり、ピリピリする刺激感、肌荒れのような乾燥状態が副作用として生じるのです。
このような副作用が生じた際は、医師の判断を仰ぎましょう!
副作用が軽度の場合は、ニキビの治療を優先しディフェリンゲルの治療が継続されます。
顔全体に塗るのではなく、ニキビの部分、皮疹の部分のみに塗布する、保湿薬を併用し乾燥を防ぐなど工夫をしてニキビ治療が継続されます。
副作用が重度の場合は、ディフェリンゲルを中止したのち、保湿薬やステロイド薬を使用し、赤みや乾燥状態の治療を行います。
ディフェリンゲル[アダパレン]の禁忌
- 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人