褥瘡や乾燥に対して使用される皮膚の保護薬、亜鉛華単軟膏の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
亜鉛華単軟膏:褥瘡治療薬
亜鉛華単軟膏は、褥瘡やおむつかぶれなど皮膚の保護に使用される薬です。
褥瘡とは、主に寝たきりの高齢者に起こりやすい、皮膚の赤いただれや傷ができる疾患です。
褥瘡の原因は、長時間同じ体位のままになることによって、一部の皮膚が体重によって圧迫され、血液循環が悪くなり栄養や酸素の供給ができないことが原因とされています。
褥瘡の症状
褥瘡の症状は、急性期か慢性期かによって異なります。
発生から1~2週間を褥瘡の急性期と呼び、発赤・紫斑・水疱・びらんなどの症状を伴います。
この時点では、浅い褥瘡か深い褥瘡かの鑑別ができないため、褥瘡部位の観察と保護が重要になります。
急性期のあとは、そのまま治癒するか、浅い褥瘡あるいは深い褥瘡の慢性期に移行します。
慢性期の症状・病態は日々変化するため、“DESIGN-R”によって褥瘡の状態・重症度を評価します。
DESIGN-Rとは、以下の頭文字を取っています。
- Depth[深さ]
- Exudate[滲出液]
- Size[大きさ]
- Inflammation/Infection[炎症/感染]
- Granulation tissue[肉芽組織]
- Necrotic tissue[壊死組織]
- Pocket[ポケット]
- Rating[評点・評価]
DESIGN-Rでは、それぞれの項目を以下のように評価します。
d0:皮膚損傷・発赤なし
d1:持続する発赤
d2:真皮までの損傷
D3:皮下組織までの損傷
D4:皮下組織を越える損傷
D5:関節腔,体腔に至る損傷
DU:深さ判定が不能
e0:なし
e1:少量:毎日のドレッシング交換を要しない
e3:中等量:1日1回のドレッシング交換
E6:多量:1日2回以上のドレッシング交換
褥瘡の皮膚損傷部の最大長径(cm)と長径と直交する最大短径(cm)を測定し、それぞれをかけたものを評価します。
s0:皮膚損傷なし
s3:4未満
s6:4-16
s8:16-36
s9:36-64
s12:64-100
S15:100以上
i0:局所の炎症徴候なし
i1:局所の炎症徴候あり(創周囲の発赤、腫脹、熱感、疼痛)
I3:局所の明らかな感染徴候あり(炎症徴候、膿、悪臭など)
I9:全身的影響あり(発熱など)
g0:治癒あるいは創が浅い
g1:良性肉芽が創面の90%以上
g3:良性肉芽が創面の50%以上90%未満
G4:良性肉芽が創面の10%以上50%未満
G5:良性肉芽が創面の10%未満
G6:良性肉芽が全く形成されていない
n0:壊死組織なし
N3:柔らかい壊死組織あり
N6:硬く厚い密着した壊死組織あり
p0:ポケットなし
P6:4未満
P9:4-16
P12:16-36
P24:36以上
亜鉛華単軟膏の作用機序、特徴
褥瘡治療では、前述の通り浅い褥瘡と深い褥瘡の2つの場合で異なります。
浅い褥瘡では、表皮・真皮のみが損傷しています。
表皮・真皮段階では再生能力があるため、皮膚の再生環境を助ける薬が使用されます。
深い褥瘡では、表皮・真皮のみでなく、皮下組織まで損傷しています。
皮下組織段階では再生できないため、壊死組織を取り除いた後、肉芽組織の形成を助ける薬が使用されます。
この際にDESIGN-Rで褥瘡の状態・重症度を把握します。
一般的には、N[壊死組織の除去]→G[良性肉芽の形成]→S[創面の縮小]の順で治療されます。
亜鉛華単軟膏は、皮膚の保護作用があり褥瘡に使用する治療薬です。
褥瘡治療では、滲出液を適度に保つ必要があります。
深い褥瘡の治療では、傷口をキレイにするため滲出液は取り除きます。
その後、適度な湿潤状態を保つために、傷口を保護するドレッシング材や皮膚保護薬が使用されます。
亜鉛華単軟膏は、浅い褥瘡・深い褥瘡いずれにも使用されます。
10%の酸化亜鉛を含み適度な吸水性を持ち、被膜を形成することで湿潤状態を保つ皮膚保護薬として使用されます。
やっくん
亜鉛華単軟膏は、酸化亜鉛の作用で被膜を作ることによって、適度な湿潤状態を保ち、褥瘡症状を改善します。
亜鉛華単軟膏の副作用
亜鉛華単軟膏は、皮膚の収れん・消炎・保護薬として発売された薬です。
亜鉛華単軟膏の副作用としては、過敏症状、発疹、刺激が知られています。
亜鉛華単軟膏の禁忌
- 重度または広範囲の熱傷
[酸化亜鉛が創傷部位に付着し、組織修復を遷延させることがあります。]