便秘時の下剤として使用される薬のひとつがスインプロイク[ナルデメジン]です。
一般的な慢性便秘症にして使われる薬ではなく、オピオイドの副作用による薬剤性便秘に対して使用される薬です。
このページでは、スインプロイク[ナルデメジン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
スインプロイク[ナルデメジン]:オピオイド誘発性便秘症治療薬
スインプロイク[ナルデメジン]は、オピオイド誘発性の薬剤性便秘症[OIC]の治療薬として使用されています。
便が毎日出ない=便秘 と思いがちかもしれませんが、そうではありません。
一般的には、3~4日以上便が出ない場合を便秘と定義しています。
便秘の原因となり得るものはさまざまです。
以下に便秘の原因となり得る一例をあげてみました。
- 食物繊維不足
- 水分不足
- 食事量不足
- 薬の副作用
- 手術の影響
- 生活環境の変化
- 黄体ホルモン量の増加
副作用で便秘になりやすい薬
- オピオイド鎮痛薬:モルヒネなどの鎮痛薬、コデインリン酸塩などの鎮咳薬
- 抗コリン薬:ベシケアなどの過活動膀胱治療薬、パキシルなどの抗うつ薬、
- Ca拮抗薬:ワソランなどの降圧薬
- 鉄剤:フェロミア
オピオイド鎮痛薬では、便秘が最も多い副作用に挙げられることが多く、それぞれの臨床試験では以下の頻度で便秘の副作用が生じています。
- MSコンチン[徐放モルヒネ硫酸塩]:13.87%
- オキシコンチン[徐放オキシコドン]:21.53%
- デュロテップMTパッチ[フェンタニル72時間]:18.24%
オピオイド鎮痛薬の作用機序は、中枢のオピオイドμ受容体に作用することで発痛物質の遊離、上行性・下行性伝導路を抑制します。
便秘の副作用は、このとき中枢のオピオイドμ受容体だけではなく、末梢のオピオイドμ受容体にも作用してしまうことが原因と考えられています。末梢のオピオイドμ受容体に作用すると、消化管運動の抑制や、アセチルコリン放出の抑制などを引き起こすためです。
スインプロイク[ナルデメジン]の作用機序、特徴
スインプロイク[ナルデメジン]は、末梢のオピオイドμ受容体に作用するオピオイド誘発性便秘症[OIC]の治療薬です。
前述のようにオピオイド鎮痛薬は中枢だけでなく末梢にも作用することから便秘等の副作用が生じやすく問題となっていました。
末梢のオピオイドμ受容体に作用し、オピオイド鎮痛薬と拮抗作用を示すのがスインプロイク[ナルデメジン]です。
スインプロイクの有効成分ナルデメジンは、モルヒネと同じ骨格であるモルヒナン骨格を有しており、モルヒナン骨格の7位にカルバモイル基からなる側鎖を導入しています。
[スインプロイクIFより改変]
側鎖であるカルバモイル基を導入することで、血液脳関門の透過性を低くし中枢へ作用しないように製剤設計されています。
やっくん
スインプロイク[ナルデメジン]は、腸管のオピオイドμ受容体に結合することで、オピオイド鎮痛薬と拮抗作用を示し、オピオイド鎮痛薬由来の便秘症を改善します。
上記作用機序から、オピオイド鎮痛薬による便秘症のみでなく、適応はありませんが吐き気や嘔吐に対しても一定の効果があると考えられます。
スインプロイク[ナルデメジン]服用時の食事の影響について
スインプロイク[ナルデメジン]の用法は1日1回投与であり、食前・食後・空腹時投与など服用タイミングについては定められていません。
IFからは、食後服用によって吸収時間の遅延が認められると報告されています。
ただ、食事の影響は受けるものの、最終的な吸収率には影響しない[AUCは同等である]ことが確認されています。
スインプロイク[ナルデメジン]の副作用
スインプロイク[ナルデメジン]は、オピオイド誘発性便秘症の治療薬として、2018年に承認を受けた薬です。
代表的な副作用としては、下痢[21.9%]、腹痛[2.2%]などの消化器系症状が挙げられます。
スインプロイク[ナルデメジン]の禁忌
- 消化管閉塞、その疑いのある患者、または消化管閉塞の既往歴を有し再発のおそれの高い患者[消化管穿孔を起こすおそれがあります。]