施設在宅の現場では、バイタルサインに加え、食事量、水分摂取量、排便・排尿、睡眠状況を記録しているケースがほとんどかと思います。
今回は、その中でも家族や介護スタッフに大きな負担のかかる不眠症についてまとめてみました。
不眠症の治療の基本は非薬物療法です。
特に高齢者においては、
- 朝、日光浴をする
- 日中の活動量を上げる
- 起床時刻を一定にする
この3つを行うだけでも、睡眠の質が改善することがあります。
それでも不眠症が改善しない場合に薬物療法を考慮します。
薬物療法も不眠の原因によって内容が異なりますので、それぞれの場合も見て行きましょう!
かゆみで眠れない不眠症
在宅における高齢者では、多くの方の皮膚が乾燥傾向にあり、保湿剤を使用するケースが多くなります。
掻いてしまうとバリア機能が破たんするため、皮膚状態が悪化し悪循環になります。
さらに、夜もかゆくて眠れない、一度寝てもかゆみで起きてしまうといった訴えも見られます。
この場合は、まずは痒みに対する治療を行います。
保湿剤やかゆみ止めの塗り薬、抗ヒスタミン薬で様子を見ます。
第一世代の抗ヒスタミン薬の場合、抗アレルギー作用に加え、強い眠気の副作用があるため、2つの効果を狙って使用される場合があります。
ただし、眠気は翌日まで残る場合もありますので、第二世代の抗ヒスタミン薬でも構いません。
まずは、しっかりとかゆみに対してアプロ―チすることが大切です。
かゆみの治療を試しても不眠が改善しない場合に、睡眠薬を検討しましょう!
痛みで眠れない不眠症
在宅における高齢者では、肩や膝、腰など慢性的な痛みに悩んでいる方が多く、塗り薬や湿布の処方が絶えません。
夜に痛みで眠れないというケースにも遭遇しますが、この場合も安易に睡眠薬の処方はしません。
痛みに対しては、塗り薬や湿布、屯用のNSAIDsが使用されます。
しかし、空腹時に服用すると胃腸症状も現れやすいので注意が必要です。
また、痛みが精神的に不安定な状態からくる場合があります。
この場合は、抗不安薬や薬効のないプラセボを処方すると効果的です。
痛みの治療を試しても不眠が改善しない場合に、睡眠薬を検討しましょう!
トイレが近くて眠れない不眠症
在宅における高齢者では、さまざまな原因によって頻尿や尿意切迫感を感じ、介護者の負担になることがあります。
トイレで起きてしまってその後眠れないというケースにも多く遭遇します。
中には夜中に10-20回程度トイレに行く方もいました。
頻尿の原因は、脳からの神経伝達が上手くいってない、膀胱容量の低下、排尿筋の筋力低下、男性の場合は前立腺肥大症などさまざまであり、なかなか在宅医では鑑別ができません。
単純に水分摂取量が多いだけということもあります。
基本的には、専門医に診てもらい頻尿治療薬や半減期の短い抗不安薬、睡眠薬などを処方します。
寝酒[アルコール]に頼ってしまう不眠症
施設在宅でお酒を飲むことは少ないですが、居宅の在宅においては眠れないからお酒を飲むことはしばしばあります。
しかし、ご存知かと思いますが、アルコールによって不眠が改善することはありません。
アルコールによって寝つきが良くなるケースはありますが、夜中や早朝に目が覚めるなど全体的な眠りが浅くなり、睡眠の質は悪化するのです。
さらにアルコール依存症へと陥ってしますため、お酒[アルコール]に頼るのであれば睡眠薬を定期的に服用することを検討します。
また、お酒[アルコール]を飲んだ際は、睡眠薬を飲まないよう指導しなければなりませんが、高齢者の中には食事とお酒を非常に楽しみにしている方が多いのも事実です。
ビールの代謝には約2時間必要と言われていますので、肝臓がある程度休まった晩酌後3-4時間程度で眠れなければ睡眠薬の服用を検討しても良いかもしれません。
睡眠薬の休薬のタイミングと減量法
睡眠薬、特にベンゾジアゼピン作動性の睡眠薬は、長期間服用していると効果が減弱したり、依存症になったりというリスクがあります。
そのため、不眠症が治れば減薬or休薬を考慮しなければなりません。
ではどうやって不眠症が治っているかを判断するのでしょうか?
- 夜間の不眠症状が改善している
- イライラなどがなく日中の生活が問題ないこと
これらが伴っていれば、減薬or休薬を考慮しましょう!
睡眠薬の減量方法としては、1/4錠ずつ減量します。
1-2週間程度経って問題なければ、さらに1/4錠減量することを繰り返します。
減量直後は、どうしても入眠時間が長くなったり、日中にイライラを生じます。
一過性のものなので、数日で回復することが多いですが、症状が強い場合は減量方法を変えることも一つの手です。
週に1-2回睡眠薬を服用しない日を作り、週に3回、4回と少しずつ服用しない日を増やしていく隔日療法といった減量方法が取られる場合もあるのです。