過活動膀胱の治療薬、ベタニス[ミラベグロン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ベタニス[ミラベグロン]:過活動膀胱治療薬
ベタニス[ミラベグロン]は、過活動膀胱の新しい治療薬として使用されています。
過活動膀胱とは、我慢のできない突然来る尿意[尿意切迫感]をはじめ、トイレに何回も行く[頻尿]や尿を我慢できなくて漏らしてしまう[尿失禁]を伴うことがある病気です。
尿勢低下や残尿感などの排尿症状、排尿後症状を主症状とする場合は、別の疾患の可能性があるため専門医への紹介が必要です。
尿が出る仕組み
私たちは、1日に合計約1.5~2Lの尿を5~6回程度に分けて排泄しています。
つまり、1回の排尿量は300mL程度になります。
膀胱内に200mL程度の尿が溜まると、脳に「尿が溜まってきたよ~」と情報を送ります。
情報を受け取った脳が、「尿を今のうちに出すべきか?」「今は尿を我慢すべきか?」という指令を再度送ります。
尿を出すときは膀胱の筋肉が収縮・緊張し、尿を我慢するときは膀胱の筋肉が弛緩・緩みます。
これが尿意と呼ばれるものです。
過活動膀胱の患者さんでは、この筋肉の収縮と弛緩がうまくコントロールできておらず、常に筋肉が収縮・緊張状態にあるのです。
この尿を出す、出さないに関する情報・指令の伝達がうまくいかないことが、過活動膀胱の原因のひとつと言われています。
過活動膀胱の原因
過活動膀胱の原因は、大きく2つに分けられます。
上述した、脳と膀胱を結ぶ情報・指令がうまくいかない神経伝達と神経伝達以外です。
- 神経伝達が原因:脳卒中、脳梗塞、パーキンソン病、脊髄損傷などです。
- 神経伝達以外が原因:加齢、出産、筋肉の衰えなどです。
ベタニス[ミラベグロン]の作用機序、特徴
過活動膀胱の中で最も多く使用されている薬が、抗コリン作用を持つ薬です。
尿を出すときに膀胱の筋肉を支配している神経伝達物質がアセチルコリンです。
なんらかの影響でアセチルコリンが活性化すると、膀胱内に尿が溜まっていなくても尿を出すように膀胱の筋肉が収縮します。
そのため、この膀胱の筋肉が収縮しないように抑える薬として、抗コリン薬が使用されています。
抗コリン薬で過活動膀胱の治療薬として使用されている薬が、ベシケア、デトルシトール、ウリトス、ステーブラです。
しかし、抗コリン薬では、膀胱以外にも胃や腸のムスカリン受容体にも作用することで、口内乾燥や便秘の副作用が問題となっていました。
ベタニスは、これまでの抗コリン薬とは異なる作用機序で膀胱の過度な収縮を防ぐ薬です。
効果は、抗コリン薬の方が強くベタニスの方がマイルドです。
膀胱の収縮・弛緩というのは、副交感神経と交感神経に支配されています。
抗コリン薬は、膀胱筋肉の副交感神経に働きかけますが、ベタニスは交感神経のβ3受容体に作用します。
やっくん
ベタニス[ミラベグロン]は、アドレナリン作動性β3受容体に作用することで、膀胱の筋肉を弛緩し、過活動膀胱の治療に使用されます。
ベタニスはベシケアやウリトス、ステーブラなどの抗コリン薬とは作用機序が異なるため、両者を併用することができ、ガイドラインでも推奨されていることが特徴です。
ベタニス[ミラベグロン]の副作用
ベタニス[ミラベグロン]は、過活動膀胱の治療薬として、2011年に承認・販売された薬です。
主な副作用としては、
γ-GTP上昇[3.7%]、便秘[2.9%]、CK(CPK)上昇[2.6%]、Al-P上昇[2.5%]、口内乾燥[1.7%]、ALT(GPT)上昇[1.7%]、AST(GOT)上昇[1.6%]、尿中蛋白陽性[1.4%]、白血球数減少[1.2%]などが挙げられます。
抗コリン薬と比較して副作用が出にくい点が特徴の1つですが、便秘や口内乾燥といった副作用の報告はされていますので、注意は必要です。
ベタニス[ミラベグロン]の禁忌
- 重篤な心疾患[心拍数増加等が報告されており、症状が悪化するおそれがあります。]
- 妊婦、授乳婦
- 重度の肝機能障害患者(Child-Pughスコア10以上)
[血中濃度が過度に上昇するおそれがあります。] - タンボコール(フレカイニド酢酸塩)、プロノン、ソビラール(プロパフェノン塩酸塩)