多剤処方による副作用
在宅医療に携わっているとよく分かるのですが、お薬の量は減ることよりも増えることが多いです。
一般的には6種類以上の薬を服用していると、約10%に何かしらの副作用が生じると言われています。
あるデータでは、65歳以上の入院患者700人において薬の副作用が104名[約14.7%]で確認されました。
副作用の内訳は、
副作用 | 割合 |
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意識障害 | 9.6% |
低血糖 | |
肝機能障害 | |
電解質異常 | 7.7% |
ふらつき・転倒 | 5.8% |
低血圧 | 4.8% |
無動・不随意運動 | 3.8% |
便秘・下痢・腹痛 | |
食欲不振・吐き気 | |
徐脈 | |
出血・INR延長 |
[厚生労働省資料より]
薬の減量・減薬に成功した事例
高齢者の薬物療法の安全性を高めるため、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」が改訂されました。
これは、アメリカや欧州のガイドラインを参考に、高齢者で本来使われるべきでない中止を考慮する薬やあまり使われていないがもっと使われるべき薬をリスト化しています。
このガイドラインを参考に、入院初期に薬の減量・減薬を試みたり、処方医への丁寧な情報提供を行うことで特に精神系や睡眠薬の減量に成功しています。
具体的には、入院時の持参薬を整理した際に、医師へ処方提案することが最も効果的と考えられています。
[厚生労働省資料より]
また、「処方調整依頼シール」を処方せんや診療録に貼り視覚的に医師に訴えることで、減薬に成功した例も報告されています。
[厚生労働省資料より]
3種類以上の睡眠薬を服用している外来患者に「処方調整依頼シール」を貼り、医師へ減薬を訴えた結果、98.4%で減薬が実施されました。
2016年診療報酬改定内容-多剤・重複投与の削減-
●病院・クリニック
入院時に減薬に成功し、退院時の服用薬剤数が減った場合を評価する仕組みが新設されました。
新設 |
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薬剤総合評価調整加算 250点(退院時に1回) |
◇算定要件
①入院前に6種類以上の内服薬(入院時において当該患者が処方されている内服薬のうち、頓用薬及び服用を開始して4週間以内の薬剤を除く。)が処方されていたものについて、当該患者の退院時に処方される内服薬が2種類以上減少した場合
②精神病床に入院中の患者であって、入院直前又は退院1年前のうちいずれか遅い時点で抗精神病薬を4種類以上内服していたものについて退院までの間に抗精神病薬の種類数が2以上減少した等の場合。
[クロルプロマジン換算で2000mg以上内服していたものについて、1000mg以上減少した場合を含めることができる。]
外来時においても服用薬剤数が減った場合を評価する仕組みが新設されました。
新設 |
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薬剤総合評価調整管理料 250点(月1回に限り) |
連携管理加算 50点 |
◇算定要件
①薬剤総合評価調整管理料
入院中の患者以外の患者であって、6種類以上の内服薬(受診時において当該患者が処方されている内服薬のうち、頓用薬及び服用を開始して4週間以内の薬剤を除く。)が処方されていたものについて、当該患者に処方される内服薬が2種類以上減少した場合は、所定点数を算定する。
②連携管理加算
処方内容の調整に当たって、別の保険医療機関又は保険薬局との間で照会又は情報提供を行った場合は、連携管理加算として所定点数を加算する。