骨粗しょう症の治療薬、ビビアント［バゼドキシフェン］の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ビビアント［バゼドキシフェン］：骨粗しょう症治療薬
ビビアント［バゼドキシフェン］は、骨粗しょう症の治療薬として使用されています。
骨粗しょう症とは、言葉のごとく骨が粗く脆くなっている病気です。
わかりやすく説明したりするために、よく骨がスカスカな状態と表現されます。
これを骨量［骨密度］の低下と表現します。
寝たきりなど介護が必要になる原因の1割が、骨折や転倒と言われています。
そのため、骨折の予防や転倒の予防が生活する上で重要となるのです。
骨折を予防するには？
そもそも、骨というものは日々新しい骨に作り変わっています。
このことを、骨のリモデリングといい、
新しく骨を作ることを骨形成、骨が分解されることを骨吸収と言います。
この骨のリモデリングのバランスが崩れ、骨吸収＞骨形成となる状態が続くと骨粗しょう症になってしまいます。
骨吸収と骨形成のバランスが崩れる原因は、ほとんどの場合が次の2つです。
閉経と加齢です。
それぞれの発症のメカニズムを見てみましょう↓
女性で骨粗しょう症が多いのは、エストロゲンという女性ホルモンの量が低下するためです。
エストロゲンには骨吸収を抑制することで、骨中のカルシウム量を調節する働きがあります。
閉経後は、エストロゲンの分泌量が急激に下がってしまいます。
すると、骨吸収が促進され骨量［骨密度］が低下してしまうのです。
加齢も骨粗しょう症の原因のひとつです。
骨を強くするために、カルシウムを摂取しなければいけない、ということは皆さんご存知かと思います。
しかし、いくらカルシウムを摂取しても、身体の中に吸収されなければ便の中に出て行ってしまいます。
この吸収に関わっているのが、活性化ビタミンD3です。
活性化ビタミンD3とは、体内のビタミンD3が肝臓・腎臓で水酸化されることで生成されます。
高齢者では、腸管吸収能や肝臓・腎臓の機能が低下しているため、活性化ビタミンD3量が減少し、カルシウムの吸収が減少、骨量［骨密度」が低下してしまうのです。
骨粗しょう症は、女性ホルモンの減少や加齢が原因で骨量［骨密度］が少なくなった病気です。
そのため、高齢の女性がなりやすい病気であることがわかります。
転倒を予防するには？
転倒を予防するための7つのポイントを紹介します。
- 階段や手すりに滑り止めを付ける
- 廊下や階段の足元は明るくする
- ものを乱雑に置かない
- カーペットのたるみは伸ばす
- 浴室には手すりを付け、滑り止めのマットをひく
- 外出時は、しっかりした靴にステッキを使う
- 転倒予防の滑り止め付き靴下を着用する
介護用の滑り止め靴下があるんですね↓
また、万が一転倒したときのために「大腿骨頸部転倒時防護用具」＝ヒッププロテクターというパッドを入れたり装着することもできます。
ビビアント［バゼドキシフェン］の作用機序
骨粗しょう症では、閉経後に急激に女性の骨量［骨密度］が減少することで発症する場合があります。
それは、上記のように女性ホルモンのひとつエストロゲン量が低下するためです。
そこで、少なくなった女性ホルモンを補うために女性ホルモンが治療薬として使用されるようになりました。
ホーリン、エストリール、プレマリン、エストラーナがその例です、
しかし、ただ単純に女性ホルモンを投与しただけでは、乳房や子宮に対しても作用してしまいます。
実際、女性ホルモン製剤では、副作用として乳がんを起こす可能性があるため、使用法が制限されています。
ビビアントは乳房や子宮には作用せず、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用します。
つまり、女性ホルモン製剤の副作用リスクを改善した薬剤なのです。
このため、ビビアントは、選択的エストロゲン受容体モジュレーター［SERM］と呼ばれています。
やっくん
ビビアント［バゼドキシフェン］は、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用し骨関連の遺伝子を活性化させ、骨吸収を抑制することで、骨量［骨密度］を増加させます。
ビビアント［バゼドキシフェン］の特徴：エビスタとの違い、比較
ビビアントはエビスタが発売された年の6年後に新しく発売された薬です。
基本的な作用機序や副作用、禁忌事項は変わりありません。
そのため、骨粗しょう症に対する効果も、ほぼ変わりありません。
骨粗しょう症に対する治療効果を評価する項目として
- 骨密度
- 椎体骨折
- 非椎体骨折
- 大腿骨近位部骨折
の4項目があります。
骨密度・椎体骨折・大腿骨近位部骨折の3項目に関してはエビスタと同等の改善効果でした。
詳しい機序は不明ですが、非椎体骨折については、ビビアントの方が優れていたという結果が出ています。
やっくん
非椎体骨折に対してはビビアントの方が抑制効果が優れています。
ビビアント［バゼドキシフェン］の副作用
ビビアント［バゼドキシフェン］は、骨粗しょう症の治療薬としては、2010年に承認を受けた薬です。
代表的な副作用としては、筋痙縮［2.5％］、線維嚢胞性乳腺疾患［2.5％］などが挙げられます。
長時間動かない状態、飛行機や高速バスへの乗車などでは、深部静脈血栓＝いわゆるエコノミークラス症候群が起こりやすくなるので、場合によっては一時的に休薬することもあります。
ビビアント［バゼドキシフェン］の禁忌
- 妊婦
- 深部静脈血栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症
［副作用として静脈血栓塞栓症（深部静脈血栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症を含む）が報告されており、このような患者に投与するとこれらの症状が増悪することがあります。］ - 長期不動状態（術後回復期、長期安静期等）
- 抗リン脂質抗体症候群
［本症候群の患者は静脈血栓塞栓症を起こしやすいとの報告があります。］