血液抗凝固薬であるワーファリン[ワルファリンカリウム]は、他の併用薬や食事の影響を受けやすいため、薬の治療域にバラツキがあることが確認されています。
薬の特性上、治療域に達しなければ血栓ができやすくなる一方で、治療域を超えてしまうと出血しやすくなるためリスクの高い薬剤です。
その際、ワーファリンがどの程度効いているのかを確認するために、プロトロンビン時間[PT-INR、単にINRと言うこともある]を定期的に測定します。
このページでは、PT-INRの測定間隔や基準値について解説しています。
PT-INRとは?
PT-INRの測定間隔は決まってはいませんが、在宅医療においては月に1回測定している先生が多い印象です。
PTとは、プロトロンビン時間の略で、血漿に組織トロンボプラスチンとCaイオンを添加し、フィブリンが析出するまでの時間を指します。
ちなみにINRとは、国際標準比[International normalized ratio]の略です。
血漿中に凝固因子が多いとPT-INR値は小さくなり、凝固因子が少ないとPT-INR値は大きくなります。
プロトロンビン時間[PT-INR]の基準値は、0.9-1.1です。
[日本臨床検査協議会:共用基準範囲2014より]
しかし、血栓予防で薬剤を投与している際は、年齢や疾患によって目標値が異なってきます。
- 米国胸部疾患学会:2.0-3.0[心臓の弁置換後は2.5-3.5]
- 日本循環器学会:1.5-2.5
高齢者は出血リスクも高いことから、在宅医療においても1.5-2.5程度を目標値にする先生が多い印象です。
プロトロンビン時間[PT-INR]と関連する薬剤性の副作用
凝固因子のいくつかは肝臓によって産生されています。
また、凝固因子の合成にはビタミンKが関わっており、ヒトにおいては腸内細菌によってビタミンKが産生されます。
PT-INRを延長する薬剤として、以下の薬が挙げられます。
PT-INRを延長する薬剤 |
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ワーファリン、ワーファリン服用中にCYP2C9阻害薬を併用 |
抗菌薬 |
肝機能障害を来す薬剤[解熱鎮痛消炎薬、血圧降下薬、抗菌薬、全身麻酔薬] |
[参考:検査値×処方箋の読み方 他]