甲状腺疾患治療薬、ヨウ化カリウムの作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ヨウ化カリウム:甲状腺機能亢進症[バセドウ病]治療薬
ヨウ化カリウムは甲状腺機能亢進症などに伴う甲状腺炎に使用される治療薬です。
バセドウ病のように甲状腺機能が亢進すると、体内の基礎代謝、エネルギー代謝が亢進されます。
また、β受容体の感受性も高くなっています。
これにより、体重減少、発熱、頻脈、眼球突出、甲状腺の肥大などの身体を燃やすイメージの症状が生じるのです。
バセドウ病を含む甲状腺機能亢進症の方に眼球突出が見られる理由は、甲状腺ホルモンの受容体が眼球裏にあるためと言われています。
甲状腺機能亢進症やバセドウ病の原因
バセドウ病を含む甲状腺機能亢進症は、何らかの原因で甲状腺ホルモンが過剰に分泌されていることが原因です。
何らかの原因というのはさまざまであり、
- 脳下垂体に腫瘍ができTSH量が過剰になる
- 免疫異常によりTSH受容体抗体[TRAb]が甲状腺を刺激し続ける
- 甲状腺に腫瘍ができ、甲状腺ホルモン[T3、T4]が分泌される
- 甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモン[T3、T4]が分泌される
などが挙げられます。
これらは、30~40代の中年女性に多い疾患とされています。
ヨウ化カリウムの作用機序、特徴
甲状腺機能亢進症の患者は、甲状腺ホルモンが多いことで上記の頻脈や代謝亢進などの症状を引き起こします。
その結果、体重の減少や疲れやすくなったり、発汗が多くなったりと日常生活に支障が出るのです。
ヨウ化カリウムは、過剰に働いている甲状腺の分泌を一時的に抑制することで、甲状腺機能亢進症やバセドウ病の治療薬として使用されます。
ヨウ化カリウムの作用機序の前に、甲状腺ホルモンが体内でどのように合成されるのかを確認してみましょう!
甲状腺ホルモンは、血液中のヨウ化物と甲状腺のろ胞内にあるアミノ酸=チロシンから生成されます。
血液中のヨウ化物イオンは、ペルオキシダーゼによってヨウ素に変換され甲状腺に取り込まれます。
ヨウ素は、ろ胞中のチログロブリンが持っているチロシン残基と結合し、MIT[モノヨードチロニン]、DIT[ジヨードチロニン]とチログロブリンの複合体を生成します。
MITとDITが縮合反応を起こし、甲状腺ホルモンであるT3、T4とチログロブリンの複合体を生成します。
甲状腺ホルモンが必要になったとき、プロテアーゼによってタンパク質との結合が切られ、血中に甲状腺ホルモンが遊離するのです。
ヨウ化カリウムの作用機序は、ヨウ化物として働くことで甲状腺に作用します。
少量のヨウ化カリウムは、甲状腺機能を高める作用があります。
一方、バセドウ病のような甲状腺機能が亢進している状態では、甲状腺刺激ホルモン[TSH]に抑制作用をもたらします。
この作用により、甲状腺ホルモンの分泌を一時的にですが低下することができるのです。
やっくん
ヨウ化カリウムは、ヨウ化物として働くことで、甲状腺刺激ホルモン[TSH]の作用を減弱させ、甲状腺ホルモンの分泌を抑制します。
ヨウ化カリウムの副作用
ヨウ化カリウムは、甲状腺機能亢進症の治療薬として、1986年に発売された古い薬です。
重大な副作用としては、長期連用により、ヨウ素中毒、ヨウ素悪液質が報告されています。
ヨウ化カリウムの禁忌
- 肺結核の患者(放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝の予防・低減の場合を除く)
[結核病巣組織に集まりやすく再燃させるおそれがあります。]