高カリウム血症の治療薬、ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]:高カリウム血症治療薬
ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]は、腎不全に伴う高カリウム血症を改善する薬です。
腎不全時に高カリウム血症が発現する理由
腎臓は、生体内の恒常性[ホメオスタシス]の維持に深く関わっています。
- 老廃物を尿として体外へ排出する
- レニンを分泌し、血圧を調節する
- ビタミンDを活性化させ、カルシウムの吸収を高める
- エリスロポエチンを分泌し、赤血球を成熟させる
- 必要物質を再吸収することで、電解質[イオン]バランスを整える
腎不全時には、これらすべての機能がうまく働かなくなります。
5の電解質バランスのひとつにカリウムイオンが挙げられます。
カリウムは、通常ナトリウムを排泄する作用があるため、積極的な摂取が勧められています。
しかし、腎機能の低下している腎不全患者では、集合管におけるカリウムの分泌が行われず、カリウムが体外へ排泄されません。
このため腎不全患者は、高カリウム血症を起こすのです。
高カリウム血症の症状
高カリウム血症は重度になると不整脈を起こし死に至る可能性があります。
5.5mEq/L以上:疲労、手足のしびれ、腹痛、吐き気、動悸
6.0mEq/L以上:不整脈
7.0mEq/L以上:心肺停止の危険性
そのため、初期症状である、疲労やしびれ、腹痛、吐き気、動悸などに注意しなければなりません。
カリウムは、バナナやホウレンソウなどの葉物、納豆などの豆類などに多く含まれるため、それらの食品を制限する必要があります。
ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]の作用機序
高カリウム血症の治療では、血液透析や輸液、陽イオン交換樹脂製剤が使用されます。
ケイキサレートは、陽イオン交換樹脂であり、高カリウム血症の治療薬に使用されます。
陽イオン交換樹脂とは、樹脂中に含まれる陽イオンが樹脂を通した溶液中の陽イオンと交換されることを指しています。
ケイキサレートの有効成分は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムです。
ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、透析装置の中で水道水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンの除去目的でも使用されています。
ケイキサレートは、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム中のナトリウムイオンが、食事などによって体内に摂取された腸管内のカリウムイオンと交換・吸着されることで、カリウムの腸管からの吸収を抑制します。
大腸内のカリウムが排泄されると、血液中から大腸にカリウムが移動し、高カリウム血症が改善されるのです。
やっくん
ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]は、陽イオン交換樹脂として作用し、カリウムイオンを吸着させ、高カリウム血症を改善します。
ケイキサレートの特徴:カリメート、アーガメイトの違い・比較・換算
ケイキサレートとカリメート、アーガメイトの違いは、カリウムと交換される陽イオンが、ナトリウムイオンかカルシウムイオンかの違いです。
ケイキサレートはナトリウムイオン、アーガメイトはカルシウムイオンをイオン交換樹脂中に含みます。
この陽イオンの違いにより効果の面で違いが生まれます。
ケイキサレートを含むイオン交換樹脂の効果を考える上で、イオンの親和性を考えなければなりません。
ポリスチレンスルホン酸樹脂の親和性[結合性]は、次のグラフに示しています。
[鳥居薬品 インタビューフォームより]
これによると、関連するイオンの中ではカルシウムイオンが親和性が高く、カリウムイオン、ナトリウムイオンの順に続きます。
つまり、親和性の高いカルシウムイオンを持つカリメートやアーガメイトは、カリウムイオンと交換されにくく、親和性の低いナトリウムイオンを持つケイキサレートは、カリウムイオンと交換されやすいことがわかります。
ただし、上記の結果はあくまでもin vitroの結果であり、臨床上では両製剤間に大きな差はなく、1gにつき1mEqほど血中濃度を下げる効果があるとされています。[興和さんDIより]
そのため、ケイキサレート⇔カリメート、アーガメイトへの薬剤を変更する場合の換算は、等量での換算を行います。[興和さん、鳥居さんDIより]
つまり、カリメートDS92.59%1包[ポリスチレンスルホン酸カルシウム5g]=ケイキサレートDS76%2包[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム5g]のように換算します。
また、ケイキサレートの方がイオン交換能が優れていることから、ケイキサレートの投与量を少なく設定する場合もあるということでした[鳥居さんDIより]
ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]の副作用
ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]は、高カリウム血症の改善薬として、1971年に承認された薬です。
主な副作用としては、下痢[3.2%]、悪心[2.8%]、浮腫[2.0%]、便秘[1.9%]、低カルシウム血症[1.7%]、嘔吐[1.6%]などが知られています。
ケイキサレート[ポリスチレンスルホン酸ナトリウム]の禁忌
- 特になし