排尿障害の治療薬、ウブレチド[ジスチグミン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ウブレチド[ジスチグミン]:排尿困難治療薬
ウブレチド[ジスチグミン]は、前立腺肥大症への適応はありませんが、排尿困難の治療薬として使用されています。
前立腺とは、男性が持つ膀胱の下部にある生殖器であり、精液を作ったり、精子を守ったりといった働きをしています。
この前立腺が何らかの影響で大きく膨れがってしまい、尿が出にくくなってしまう病気が前立腺肥大症です。
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症の原因は、大きく2つに分けられます。
前立腺そのものが大きくなりすぎている場合と、交感神経が過敏に緊張し尿道が狭くなっている場合です。
- 物理的な原因:前立腺そのものが大きくなる
- 機能的な原因:交感神経の緊張
ウブレチド[ジスチグミン]の作用機序、特徴
排尿困難の多くが前立腺肥大症を伴っています。
しかし、そもそも膀胱自体が収縮しないと、排尿が促進されません。
つまり、膀胱の筋肉[排尿筋]収縮異常が、排尿困難を引き起こすひとつの原因となるのです。
排尿筋の収縮には副交感神経の神経伝達物質のひとつアセチルコリンが関わっています。
そのため、排尿困難の治療には、アセチルコリンの働きを高める薬が使用されます。
アセチルコリンの働きを高める、コリンエステラーゼ阻害薬のひとつがウブレチドです。
ウブレチドは、膀胱に存在する副交感神経の働きを高めることで、膀胱の排尿筋を収縮させ、排尿を促します。
やっくん
ウブレチド[ジスチグミン]は、コリンエステラーゼを阻害し、膀胱にあるアセチルコリン受容体を間接的に刺激することで、排尿筋の収縮を促進し、排尿困難の治療に使用されます。
ウブレチド[ジスチグミン]の副作用
ウブレチド[ジスチグミン]は、排尿障害、重症筋無力症の治療薬として、1968年に発売された古い薬です。
主な副作用としては、下痢[5.2%]、腹痛[3.3%]、発汗[1.9%]、尿失禁[1.3%]などが挙げられます。
ウブレチドの重大な副作用:コリン作動性クリーゼ
ウブレチドは、排尿障害や重症筋無力症の治療薬として使用されていますが、排尿障害の治療時に10~15mg/日投与した場合に、コリン作動性クリーゼによる死亡例が2009年までに少なくとも10例報告されました。
コリン作動性クリーゼとは、アセチルコリンの働きが過剰になり、呼吸困難を伴う危険な状態になることを指します。
この副作用防止のため、排尿障害に使用する際は、1日5mgが投与上限量と改訂されました。
そして、ウブレチドを投与時は、コリン作動性クリーゼの初期症状に注意しなければなりません。
悪心・嘔吐、腹痛、下痢、唾液分泌過多、気道分泌過多、発汗、徐脈、縮瞳、呼吸困難等、臨床検査:血清コリンエステラーゼ低下
ウブレチド[ジスチグミン]の禁忌
- 消化管又は尿路の器質的閉塞
- 迷走神経緊張症
- レラキシン[スキサメトニウム](脱分極性筋弛緩剤)