下痢止め薬として昔から使用されている薬のひとつがロートエキス散です。
今回は、ロートエキス散の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ロートエキス散:下痢症治療薬
ロートエキス散は、下痢の治療薬として使用されています。
通常、便の70-80%は水分ですが80-90%になると軟便、90%以上になると下痢となります。
便秘と同様、下痢の原因となり得るものはさまざまです。
下痢の原因を大きく3つに分けてみました。
- 細菌やウイルスなどが原因の感染性腸炎による下痢
- 腸管運動の亢進や低下による下痢
- 腸管内容物がうまく吸収されないことによる下痢
感染性腸炎による下痢の場合は、生体にとって有害な細菌やウイルスを排除するため、自己防御機能として働いています。
そのため、単純に下痢止めを使用してはいけません。
下痢の原因をしっかりと考え、状態に合った下痢止め薬を使用する必要があるのです。
ロートエキス散の作用機序、特徴
前述のように、下痢止め薬は下痢の原因によって使い分けなければなりません。
一般的な下痢止め薬は、腸管運動の亢進が原因の際の下痢に使用されます。
腸管運動が亢進する場合とは、通勤や通学時、発表時などの緊張・ストレスや飲みすぎなどが当てはまります。
ロートエキス散は、このような腸管運動の亢進を抑制する下痢止め薬です。
ロートエキスとは、植物のハシリドコロの根茎及び根からの抽出物であり、l-ヒヨスチアミン、アトロピン(dl-ヒヨスチアミン)及びスコポラミンなどの成分を含みます。
これらの成分が、腸管のM3受容体に拮抗作用を示し腸管平滑筋を弛緩させるのです。
これにより、腸液の分泌の抑制、過剰な腸管運動を抑制し止痢作用を示します。
やっくん
ロートエキス散は、腸管のM3受容体に作用しアセチルコリンの作用と拮抗することで、下痢症状を改善します。
ロートエキス散の副作用
ロートエキス散は、胃酸過多や痙攣性便秘の治療薬として、1950年に承認された薬です。
ストッパやビオフェルミン下痢止めなど市販薬では、主に下痢止めとして使用されています。
代表的な副作用としては、抗コリン作用による口濁、排尿困難、便秘などが挙げられます。
ロートエキス散の禁忌
- 緑内障[眼内圧を高め、症状を悪化させることがあります。]
- 前立腺肥大による排尿障害[さらに尿を出にくくすることがあります。 ]
- 重篤な心疾患[心拍数を増加させ、症状を悪化させるおそれがあります。]
- 麻ひ性イレウス[消化管運動を抑制し、症状を悪化させるおそれがあります。]