ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]の対象者
ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]は、肺炎球菌に対する23価のワクチンとして使用されています。
近年、肺炎が原因で亡くなる方が増えてきています。
疾患別でガン、心疾患に次いで3位と報告されており、死亡者の95%以上が65歳以上の高齢者です。
中でも肺炎球菌が原因の肺炎が30%と一番多いと報告されています。
肺炎の予防法としては次の5つが推奨されています。
- 口腔ケア
- 呼吸器特異的[体位ドレナージや気管支拡張薬]
- ワクチン
- 食べ物の形状[とろみやキザミ]
- リハビリ[嚥下機能]
中でも肺炎球菌ワクチンはイギリスでは68.9%、アメリカでは59.7%と摂種率が高い一方で、2013年時点では日本では18%と低迷していました。
そこで、2014年10月より肺炎球菌ワクチンの定期接種が始まり、2016年時点では43%まで接種率が向上しました。
定期接種の対象者は次の2つです。
- 65歳以上の高齢者
- 60歳以上65歳未満で、心臓・腎臓・呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害を有する人[身体障害者手帳1級相当]
これらの対象者は現在のところ一生に1回のみですが、お住まいの自治体より補助を受けることができます。
補助の金額は各自治体によって異なりますが、自己負担金3000-5000円前後に設定しているところが多いようです。
ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]の効果
ニューモバックスNPは、23種類の型を一つにまとめた23価の肺炎球菌ワクチンです。
肺炎球菌ワクチンは不活化ワクチンに分類されます。
ニューモバックスNPは、23価のワクチンにすることで肺炎球菌の85.4%をカバーしています。
ニューモバックスNPの肺炎球菌に対する効果は次の研究結果に示しています。
国内の高齢者施設に入居している1006人(平均年齢85歳)に対する研究で、肺炎および肺炎球菌性肺炎の発症数を示しています。
ワクチン接種群 n=502 | プラセボ群 n=504 | |
---|---|---|
肺炎発症数[発症率] | 63[12.5%] | 104[20.6%] |
肺炎球菌性肺炎発症数[発症率] | 14[2.8%] | 37[7.3%] |
この結果より、ワクチン接種群は肺炎球菌性肺炎を63.8%、肺炎全体を44.8%減らせたと報告しています。
また、肺炎球菌性肺炎での死亡はワクチン接種群で0/14 [0%]、プラセボ群では13/37[35.1%]と死者数も抑制されました。
[Maruyama T et al.BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004]
やっくん
ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]は、高齢者施設で発症する肺炎球菌性肺炎を有意に抑制し、死者数を減少させたと考えられています。
しかし、肺炎球菌ワクチンであるニューモバックスNPの効果は、徐々に低下していきます。
接種5年後には、抗体価が80%程度まで落ちるため、再接種の必要性は5年以上空けてから考慮するとされています。
ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]の副作用
ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]は、23価の肺炎球菌ワクチンとして、1988年に承認された薬です。
主な副作用としては、注射部位疼痛[72.3%]、注射部位発赤[26.2%]、注射部位腫脹[23.1%]、頭痛[6.2%]、腋窩痛[4.6%]、注射部位?痒感[3.1%]などが挙げられます。
過去5年以内にニューモバックスNPの接種歴がある場合、注射部位の痛みや腫れが強く現れやすいため、再接種の必要性を慎重に考慮するとされています。
また、重大な副作用として、アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病、蜂巣炎が挙げられます。
ニューモバックスNP[肺炎球菌ワクチン]の禁忌
摂種不適当者として以下が挙げれらます。
- 2歳未満の患者
[含有される莢膜型抗原の一部に対して十分応答しないことが知られており、また本剤の安全性も確立していないので投与しないこと。] - 明らかな発熱を呈している者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者