フレイルの予防や治療では、①バランスの摂れた食事、②適度な運動や③口腔ケアが重要になります。
また、東洋医学における”未病”はフレイルと重なる部分が多いとされているため、漢方薬の使用が注目されています。
今回は、漢方薬の中で最強の補剤とも呼ばれる「人参養栄湯」の臨床データを紹介します。
フレイルとは?治療法について
フレイルとは、加齢に伴い筋力や心身の活力が低下した状態のことを指します。
フレイルについては、コチラのページで解説しています。
フレイルとは?ロコモ、サルコペニアとの違いや診断基準について
フレイルの予防や治療では、①バランスの摂れた食事、②適度な運動や③口腔ケアが重要になります。
また、東洋医学における”未病”はフレイルと重なる部分が多いとされているため、漢方薬の使用が注目されています。
今回は、漢方薬の中で最強の補剤とも呼ばれる「人参養栄湯」の臨床データを紹介します。
人参養栄湯の生薬成分
人参養栄湯は12種類の生薬成分から成っています↓
地黄 | 桂皮 | 人参 | 当帰 |
芍薬 | 茯苓 | 黄耆 | 陳皮 |
遠志 | 五味子 | 白朮 | 甘草 |
代表的な補剤である補中益気湯と十全大補湯と比較してみましょう!
人参養栄湯と補中益気湯との比較
地黄 | 桂皮 | 人参 | 当帰 |
芍薬 | 茯苓 | 黄耆 | 陳皮 |
遠志 | 五味子 | 白朮 | 甘草 |
↑人参養栄湯のみの成分[オレンジ] | 大棗 | 柴胡 | |
補中益気湯のみの成分[青]→ |
生姜 | 升麻 |
赤色の6種類の成分が補中益気湯と同じ成分です。
人参養栄湯は、補中益気湯に芍薬などの補血成分が加わった方剤と言えます。
そのため疲労感や体力低下、冷え性、貧血患者に適しています。
また、地黄が入っているため、胃腸障害のある方は補中益気湯の方が適しています。
人参養栄湯と十全大補湯との比較
五味子 | 人参 | 茯苓 | 桂皮 | 川芎 |
陳皮 | 黄耆 | 甘草 | 当帰 | ↑ 十全大補湯のみの成分 [オレンジ] |
遠志 | 白朮 | 地黄 | 芍薬 |
↑人参養栄湯のみの成分[オレンジ]
赤色の9種類の成分が十全大補湯と同じ成分です。
人参養栄湯は、十全大補湯に活血作用のある川?を取り除き、不安を取り除く遠志を加えた方剤と言えます。
また、陳皮が入っているため、人参養栄湯の方が胃もたれはしにくいです。
人参養栄湯と筋力
2016年に65歳以上の独歩可能な高齢者27人を対象に臨床試験を行ったデータを紹介します。
人参養栄湯投与前と投与24週後の握力、および筋肉量を比較しました。
握力の変化
左手:16.9→18.1㎏
右手:17.8→19.1㎏
→左手では上昇傾向、右手では有意な上昇が認められました。
筋肉量の変化
34.9→34.2㎏
→握力は上昇にしたものの、筋肉量は若干の減少傾向でした。
→しかし、コントロール群と比較すると人参養栄湯投与群は筋肉の低下量が少ないという結果になりました。
これら筋力の向上や筋肉量の維持は、陳皮・人参・五味子におけるミトコンドリアの活性が作用機序ではないかと考えられています。
[向坂 直哉:Phil漢方 65,2017]
人参養栄湯と疲労感
クラシエの人参養栄湯によって、臨床試験が行われています。
疲労倦怠だけでなく、食欲不振の改善や、病後の体力低下、ねあせ、手足の冷え、貧血に対して改善効果があったと報告されています。
改善効果は、飲み始めて8週間後以降に有意差が認められています。
全体的な効果としては、有効例が40.8%、やや有効49.7%、無効9.5%と高い評価を得ています。[n=537]
その間の副作用は、3.9%に生じ、悪心や腹部不快感など胃腸障害が主でした。
[鈴木伸一 他:医学と薬学 74(10),2017]