高血圧の治療薬として使用されるのが、サイアザイド系利尿薬のフルイトラン[トリクロルメチアジド]です。
今回は、フルイトラン[トリクロルメチアジド]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
フルイトラン[トリクロルメチアジド]:利尿薬の使い分け
フルイトラン[トリクロルメチアジド]は利尿薬として使用されています。
血圧降下薬として利尿薬を使う場合は、一般的にサイアザイド系利尿薬が使用されることが多く、特にeGFR[腎機能の指標]が30以上ではサイアザイド系利尿薬を用います。
一方で、eGFRが30未満の場合はループ利尿薬を用います。
ループ利尿薬はサイアザイド系利尿薬よりも利尿効果は高くなるんですが、降圧効果は低いとされているため、効果が不十分の場合に両者を併用することもあります。
他の血圧降下薬との併用も推奨される場合がありますが、糖・脂質代謝に影響を与えるため、β遮断薬との併用は行いません。
低ナトリウム血症や低カリウム血症、耐糖能低下による高血糖、高尿酸血症、高中性脂肪血症などへの副作用に注意します。
フルイトラン[トリクロルメチアジド]の作用機序、特徴
サイアザイド系利尿薬はチアジド系利尿薬と呼ばれることもあります。
サイアザイド系利尿薬は、フルイトラン[トリクロルメチアジド]が分類されています。
フルイトラン[トリクロルメチアジド]はサイアザイド系利尿薬で最も使用されている薬です。
腎臓中の尿細管は、近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管の4つに分かれます。
尿細管の主な役割は、身体に必要な物質を回収して再利用する「再吸収」を行うことです。
やっくん
フルイトラン[トリクロルメチアジド]は、遠位尿細管におけるNa+とCl–の再吸収を抑制することで、利尿作用を示します。
ナトリウムが尿として身体の外に排出されるため、身体の中の血液量が減り、塩分によるむくみが減ることで血圧が下がるのです。
フルイトラン[トリクロルメチアジド]の副作用
フルイトラン[トリクロルメチアジド]は、利尿薬として1960年に発売された薬です。
主な副作用は、血清尿酸値上昇[11.5%]、BUN上昇[8.0%]、血清クレアチニン上昇[3.2%]、血清K低下[2.8%]、頭痛・頭重[2.3%]、空腹時血糖値上昇[1.9%]、全身倦怠感[1.7%]などが報告されています。
特に注意すべき副作用は、低カリウム血症、高血糖、高尿酸血症などが報告されています。
フルイトランによる低カリウム血症は、以下の機序で起こります。
低カリウム血症がおこることで、インスリンの分泌障害による高血糖、近位尿細管による尿酸の再吸収が促進されます。
フルイトラン[トリクロルメチアジド]の禁忌
- 無尿[フルイトランは遠位尿細管に到達しなければ効果を発揮しません。]
- 急性腎不全
[体液量の減少と共に腎血流量が減少し腎機能を更に悪化させるおそれがあります。] - 体液中ナトリウム、カリウム減少
[低ナトリウム血症、低カリウム 血症等の電解質失調を悪化させるおそれがあります。]