残薬確認の徹底化
本来決まった時間に服用されるべき薬ですが、飲み忘れや何らかの理由で服用できない場合があります。
そのまま服用することがなく、自宅に眠っている薬を”残薬”と呼んでいます。
実際に在宅医療に携わっていると、次のような残薬の山に遭遇することが頻繁にあります。
服用時点において一包化していない場合が多く、袋やかご、中には段ボールいっぱいの残薬を持ってこられる場合があります。
[画像:厚生労働省HPより]
2015年、TVメディアでも残薬について取り上げることが相次ぎ、問題視されています。
朝日新聞では、78歳のおばあさんが、15種類の薬を十分に管理できなかったため、約14万円分の薬が自宅に眠っていた事例を紹介しています。
http://www.asahi.com/articles/ASH465DMZH46UTIL026.html
この残薬ですが、1年間の総額は500億円に迫ると推計されています。
残薬が発生する理由
患者アンケートによると、約6割の方が薬が余った経験があると答えています。
特に年齢別では差はありませんでしたが、服用薬剤数が多くなるにつれて残薬が発生する傾向が確認されました。
薬が余った方にアンケートを取った結果、残薬が発生する理由としては、次の4つが挙げられています。
- 外出時に持参するのを忘れたため[約40%]
- 病気が治ったと自分で判断し飲むのをやめた[約30%]
- 処方された日数と医療機関への受診の間隔が合わなかったため[約25%]
- 種類や量が多く、飲む時間が複雑で飲み忘れた[約25%]
メディアで問題になっている残薬については、4の飲み忘れが大多数かと思います。
一包化することや、お薬ボックス・お薬カレンダーでの管理をすることで大幅にコンプライアンスを上げることができます。
調剤薬局における残薬の削減効果
H24年度の診療報酬改定以降、薬剤服用歴管理指導料を算定するにあたり残薬を確認することが必須となりました。
しかし、残薬を確認した上で、医師に疑義照会をし処方日数を変更した例はそこまで多くありません。
平成25年度全国薬局疑義照会調査の結果概要を紹介します。
- 疑義照会の内容のうち残薬による日数調整を行った割合は10%
- 処方箋枚数で考えた場合、0.23%の割合で残薬による日数調整が行われている
- 残薬の日数調整では1枚につき約1600円分の薬が削減できた
この結果から、1年間で7.9億枚の処方箋が発行される[H23年度処方箋枚数]と仮定すると、約29億円の残薬が解消・削減できていると試算されました。
7.9億枚/年×0.23%×1600円/枚=約29億円/年
前述の朝日新聞の記事によると残薬は年間約500億円にのぼると試算されています。
薬局薬剤師が疑義照会などによって残薬による日数調整を提案できるよう、2016年診療報酬改定により処方箋の仕組みが変更されました。
2016年診療報酬改定内容-処方箋の様式を変更し残薬削減-
処方箋の備考欄に、調剤時に残薬を確認した場合の対応を記載することが義務付けられました。
医師は患者に残薬があった場合の調剤薬局の対応について、次の3つから選ぶことになりました。
- 調剤薬局から疑義照会をしてもらう[疑義照会にて日数調整をするかを判断する]
- 今回はそのままの日数で処方し、残薬の情報提供を事後報告してもらう
- 調剤薬局からの残薬についての情報提供は薬局が必要と判断したときのみ行う
1あるいは2の場合は、該当部分にチェックを入れます。
どちらにもチェックを入れなければ、3の対応になります。