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2020年度診療報酬改定:中医協の答申まとめ[薬局関連]

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2020年度令和2年度診療報酬改定調剤薬局

2020年診療報酬改定において、中央社会保険医療協議会[中医協]が公表した答申について、調剤薬局に関連する部分をまとめています。

2020年度診療報酬改定に向けた答申

2020年度診療報酬改定について様々な噂が飛びかっていて、私たち薬局薬剤師は不安な日々をお過ごしかと思います。

診療報酬改定においては、「どれくらいのお金が診療報酬に配分されるか=予算」と「配分されたお金をどのように使うか=診療報酬の方向性」が重要となります。

診療報酬改定の議論の流れは以下の通りです。

2019年12月10日
診療報酬改定の基本方針

2020年1月29日-2月5日
診療報酬改定に向けた個別改定項目(案)
2020年2月7日
中医協が厚生労働省へ答申

答申とは何か?についてはこちらで解説しています。

2020年度診療報酬改定:3つのポイント

2020年度診療報酬改定の個別改定(案)を見た限り、小規模の調剤薬局を含め、処方箋集中率の高い調剤薬局に対して厳しい診療報酬改定になるのではと私は感じました。

一方で、これまで当たり前のサービスのような形でやっていた業務が多く診療報酬に反映されたのではないでしょうか。

やっくん

個人的には、これまで評価されなかった対人業務が多く評価されて非常に嬉しく思います(^^♪

そして、中医協から厚生労働省の答申内容を確認した感想は、次の3つがポイントかなと思ってます。

  1. 利益率の高い薬局の単価を下げる
  2. 【対人業務(対患者)の評価】時間が掛かる業務を評価する
  3. 【対人業務(対医療従事者)の評価】地域医療への貢献を評価する

利益率の高い薬局の単価を下げる

ここは、2018年度の診療報酬改定と同じ流れですね。

調剤薬局:規模別の利益率

調剤薬局の経営規模によって、利益率が大きく違うことはこれまでも取り上げてきました。

2018年度の診療報酬改定の際に“薬局の利益面”については解説しているので、リンク貼っておきますね☆

会議 2018年度診療報酬改定:中医協の答申まとめ[薬局関連]

2018年度診療報酬改定後では、すべての規模の薬局において利益率が減少したことが報告されています。

  1店舗 2-5店舗 6-19店舗 20店舗以上
損益率:H30 1.2%[-2.6] 2.0%[-2.0] 7.2%[-1.1] 7.6%[-4.5]
損益率:H28 3.8% 4.0% 8.3% 12.1%

調剤薬局:集中率と医薬品備蓄率

2020年度診療報酬改定では、新たに処方箋集中率95%以上の薬局が、“医薬品備蓄数が少ない”点が言及されました。

参考 【調剤】令和2年度診療報酬改定の概要厚生労働省

今回ターゲットとなった処方箋集中率は95%以上でしたが、これまでの診療報酬改定の流れから、2022年以降の診療報酬改定で、90%以上や85%以上と下がっていくことを想定した方が良いでしょう!

【対人業務(対患者)の評価】時間が掛かる業務を評価する

2016年度の診療報酬改定では、残薬等の整理を行うことが医療費削減にもつながることが評価されました。(=外来服薬⽀援料)

2018年度の診療報酬改定では、ポリファーマシー患者の減薬について薬局薬剤師の介入が評価されましたね。(=服⽤薬剤調整⽀援料)

このように、普段の薬局業務で当たり前にやっている部分が、近年少しずつ評価されてきています。

2020年度診療報酬改定では、対患者への対人業務として、次の4つが議論されました。

  1. 吸入薬の服薬指導
  2. 簡易懸濁法の説明・指導
  3. 糖尿病患者等に対する調剤後のフォローアップ
  4. 血液・生化学的検査の結果の活用

1.吸入薬の服薬指導

吸入薬の服薬指導の重要性が高いことは近年注目されており、薬剤師の勉強会・講習会でも良く扱われる項目かなと思います。

“認定吸入指導薬剤師”といった言葉もあるくらいですしね(・ω・)

ガイドライン上でも、吸入手技については次のように重要視されています。

吸⼊⼿技の不良は喘息コントロールの不良、増悪リスクや副作⽤の増加につながる。

吸⼊指導の重要な担い⼿は薬剤師であり、適切な病薬連携が吸⼊指導の成功の鍵を握る。

コントロールが良好でなく、治療ステップアップを考慮する際や増悪歴のある患者には服薬アドヒヤランス とともに吸入手技を点検する。

【アレルギー総合ガイドライン2019】

このような背景から、デモ機等を用いた吸入指導が薬剤師に期待され評価される形になりました。

2.簡易懸濁法の説明・指導

簡易懸濁法は、粉砕投与よりも安定性が良かったり、配合変化が少ない、細かな調整が可能など有用な面が多い一方、患者にとっては注意点も増え手技が少し手間が掛かりますよね。

このような背景から、医療機関との連携、および患者へ簡易懸濁法の説明・指導が薬剤師に期待され評価される形になりました。

3.糖尿病患者等に対する調剤後のフォローアップ

調剤薬局患者フォローアップ回数統計

[出典:薬局の機能に係る実態調査(令和元年度医療課委託調査)速報値を改変]

薬を飲んだ後の経過に薬剤師が介入すべきと言われて10年近く・・・最近では“調剤後の患者への服薬状況の確認等を実施している薬局”の割合が、1ヶ月の期間において32%もあったことが報告されています。

主には電話対応で60%前後ですが、麻薬や抗がん剤の患者の場合、直接自宅に訪問するケースもあるのではないでしょうか?

2020年度の診療報酬改定で議題に挙がったのは、“重症低血糖”について。

  • インスリン製剤やSU剤が重症低血糖原因薬剤の90%以上を占めること
  • 食事の影響や薬剤の誤薬が重症低血糖原因の70%程度を占めること

このような背景から、インスリン製剤やSU剤の適正使用を推進する目的で薬剤師のフォローアップが期待され評価される形になりました。

4.血液・生化学的検査の結果の活用

患者検査値薬局提示薬変更

[出典:薬局の機能に係る実態調査(平成30年度医療課委託調査)]

患者が⾎液検査値等を薬局に提示することにより処⽅内容が変更するケースが20%弱あったと報告されています。

⾎液検査値等の活⽤により処⽅内容が変更となった場合の評価を拡充する案が議論されましたが、今回は見送りとなりました。

【対人業務(対医療従事者)の評価】地域医療への貢献を評価する

2016年度の診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師が新設され地域医療への貢献が評価されました。

2018年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算が新設され地域医療への貢献(実績)が評価されました。

このように、普段の薬局業務で当たり前にやっている部分が、近年少しずつ評価されてきています。

2020年度診療報酬改定では、対医療従事者への対人業務として、次の3つが議論されました。

  1. 医療機関の薬剤師と薬局薬剤師の連携
  2. 多職種と薬局薬剤師の連携
  3. 情報を一元的・継続的に把握する取り組み【お薬手帳と重複投薬】

1.医療機関の薬剤師と薬局薬剤師の連携

抗がん剤治療を受けている患者や、かかりつけ医⇔入院先の医療機関を行き来する患者では、薬局薬剤師と各医療機関の薬剤師間で連携を取ることが多いかと思います。

ただし、診療報酬上は評価されていない項目であるため、時間を掛ければ掛けるほど薬局経営においては赤字といった状況が続いていました。

このような現在評価されていないが、質の高い医療と考えられる取組が少しずつですが診療報酬上で評価されるようにと議論されています。

このような背景から、薬局薬剤師と病院薬剤師間の情報共有に対する取組が評価される形になりました。

2.多職種と薬局薬剤師の連携

2016年、「患者のための薬局ビジョン」の進捗状況を把握・評価する指標(KPI)において、次の項目が新たに評価対象として挙げられました。

医療機関等との連携
健康サポート薬局研修を修了した薬剤師が地域ケア会議等の地域の多職種と連携する会議に出席している薬局数(過去1年間に1回以上)

2018年、地域支援体制加算が新設されました。地域支援体制加算の算定薬局は未算定薬局に比べ次の4項目の実施割合が高かったことが報告されています。

  1. 医療機関との勉強会・研修会への参加(44%:29%)
  2. 臨床検査値の 情報共有(30%:19%)
  3. 患者の入院時の服用薬の情報共有(24%:13%)
  4. 患者の服薬状況等の情報提供(能動|43%:28%、受動|39%:22%)

[診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和元年度かかりつけ薬剤師調査)速報値]

地域に貢献する薬局を適切に評価するために、地域包括ケアシステムにおいて薬局薬剤師が多職種と連携することが必須であると議論されました。

3.情報を一元的・継続的に把握する取り組み【お薬手帳と重複投薬】

厚生労働省が患者の服用薬について一元的な薬学的管理を推進して5年以上経ちました。

H28年のさいたま市の調査では、レセプト分析によって以下の順で重複投薬が多く確認されたことが報告されています。

  1. レバミピド(消化性潰瘍用剤)
  2. ゾルピデム(催眠鎮静剤、抗不安薬)
  3. エチゾラム(精神神経用剤)
  4. ロキソプロフェン(解熱鎮痛消炎剤)
  5. ブロチゾラム(催眠鎮静剤、抗不安薬)
  6. アムロジピン(血管拡張剤)
  7. メコバラミン(ビタミンB剤)
  8. 酸化マグネシウム(制酸剤)
  9. L-カルボシステイン(去たん剤)
  10. オロパタジン(その他のアレルギー用剤)

[出典:さいたま市,第2期さいたま市国⺠健康保険保健事業実施計画(第2期データヘルス計画)]

2020 年度の診療報酬改定においても引き続き、“地域連携・かかりつけ薬局/薬剤師機能・お薬手帳の活用”によって重複投薬がさらに防げるのではないかと期待されています。

また、現在各医療機関が患者情報をクラウド上で閲覧できるシステム作りが進んでおり、お薬手帳に代わるシステムが今後導入される見通しとなっています。

このような背景から、お薬手帳等を使用し重複投薬を防ぐための医療機関間の連絡・調整を⾏う取組が評価される形になりました。

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