不眠時の睡眠薬として使用される薬のひとつがエバミール[ロルメタゼパム]です。
このページでは、エバミール[ロルメタゼパム]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
エバミール[ロルメタゼパム]:不眠症治療薬
エバミール[ロルメタゼパム]は、不眠症の治療薬として使用されています。
私たちが睡眠をとる際のメカニズムは複雑で、はっきりとはわかっていません。
しかし、その複雑なうちの一つ、脳を休める作用(=興奮状態にある脳が抑制状態になる)は解明されています。
脳が休まる場合(=脳が抑制状態)、細胞の中にCl–が流入することで、細胞内がマイナスに傾いています。
このマイナスに傾いた状態を、“過分極”といいます。
過分極の状態の脳は、外からの刺激を受けにくい状態になっているため、脳が休まっている=中枢神経抑制状態にあるのです。
一方で、脳が活動している場合(=脳が興奮状態)、細胞の中にNa+が流入することで、細胞内がプラスに傾いています。
このプラスに傾いた状態を、“脱分極”といいます。
脱分極の状態の脳は、外からの刺激を受けやすい状態になっているため、脳が興奮している=中枢神経興奮状態にあるのです。
やっくん
睡眠薬は、脳を休める(抑制する)方向に持っていくため、脳のCl–チャネルを開き、細胞内に流入作用することで、催眠作用を示すものがほとんどです。
エバミール[ロルメタゼパム]の作用機序、特徴
不眠症の種類は主に次の4つのパターンに分けられます。
1.入眠障害:布団に入ってから、睡眠するまでの時間が長く、寝つきが悪い
2.中途覚醒:寝つきは良いが、睡眠途中で目が覚めてしまい、その後寝れない
3.早期覚醒:朝早くに目覚めてしまい、その後寝れない
4.熟眠障害:夢を見ることが多く、熟睡できない
自分がどの不眠症のタイプなのか、それぞれの症状に合わせて不眠症の薬を使い分けます。
不眠症に用いられる薬のほとんどは、ベンゾジアゼピン基といった骨格を持っており、ベンゾジアゼピン作動性睡眠薬と分類されています。
ベンゾジアゼピン作動性睡眠薬は作用時間[半減期]によってさらに、超短時間型・短時間型・中間型・長時間型の4つに分類・使い分けされています。
ベンゾジアゼピン作動性睡眠薬は、ベンゾジアゼピン結合部位に結合し、Cl–チャネルを開口し、過分極状態になるため、脳を休める催眠作用があります。
このベンゾジアゼピン結合部位には、ω1・ω2受容体と2つの結合部位が関係しています。
ω1受容体の作用が、不眠時に必要な催眠作用になります。
ω2受容体の作用は、不安や緊張を和らげる抗不安作用や筋弛緩作用になります。
ベンゾジアゼピン作動性睡眠薬は、 ω1、ω2受容体と2つの受容体に結合し作用します。
このベンゾジアゼピン作動性睡眠薬のひとつがエバミールです。
やっくん
エバミール[ロルメタゼパム]は、ベンゾジアゼピン結合部位に結合し、Cl–チャネルを開口することで、脳の働きを抑制し、不眠症を改善します。
エバミールは睡眠薬の中でも、短時間型に属するため、服用後10時間程度効果が持続します。
エバミールの特徴①:高いω1受容体選択性
他のベンゾジアゼピン作動性睡眠薬である、フルニトラゼパム[サイレース]やジアゼパム[セルシン]は、ほぼ1:1の割合でω1受容体とω2受容体に作用します。
一方、エバミール[ロルメタゼパム]は3:1の割合でω1受容体に作用するため、ふらつきなどの副作用が出にくい製剤というのが特徴です。
やっくん
つまり、エバミールは他の睡眠薬に比べて3倍ω1受容体に結合しやすい製剤です。
エバミールの特徴②:CYPによる代謝を受けにくい
ほとんどの睡眠薬は、CYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を誘導するテグレトール[カルバマゼピン]やCYP3A4を阻害するクラリス[クラリスロマイシン]などと併用する場合は注意しなければなりません。
エバミール[ロルメタゼパム]は、グルクロン酸抱合を受けて代謝されるため、CYPによる代謝を受けにくく他の薬の影響を受けにくい点が特徴です。
エバミール[ロルメタゼパム]の副作用
エバミール[ロルメタゼパム]は、不眠症の治療薬として、1990年に承認を受けた薬です。
代表的な副作用としては、眠気[1.17%]、ふらつき[0.95%]、倦怠感[0.59%]、頭重感[0.40%]などが挙げられます。
また、エバミールには、退薬・離脱症状[薬の服用を急に止めると起こる精神的な副作用=痙攣発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想]があると言われているため、服用を中止するときは、徐々に減量します。
耐性[徐々に薬が効かなくなる作用]について、ベンゾジアゼピン作動性睡眠薬であるエバミールは、作用時間が短いため、早期より形成しやすいとされています。
エバミール[ロルメタゼパム]の禁忌
- 急性狭隅角緑内障
- 重症筋無力症[筋弛緩作用により、症状を悪化させるおそれがあります。]
- 肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で呼吸機能が高度に低下