甲状腺疾患治療薬、チラーヂンS[レボチロキシン]の作用機序、特徴、副作用について解説しています。
チラーヂンS[レボチロキシン]:甲状腺機能低下症治療薬
チラーヂンS[レボチロキシン]は橋本病など甲状腺機能低下症や粘液水腫、クレチン症の治療に使用される治療薬です。
甲状腺機能低下症のように甲状腺機能が低下すると、体内の基礎代謝、エネルギー代謝がうまくいきません。
これにより、体重増加、むくみ、徐脈、便秘、寒がりなどの身体を動かせないイメージの症状が生じるのです。
甲状腺機能低下症の原因
甲状腺機能低下症は、何らかの原因で甲状腺ホルモンが合成・分泌されなくなったことが原因です。
何らかの原因というのはさまざまであり、
- 慢性甲状腺炎(橋本病)による甲状腺の破壊
- 先天性のもの
- 海藻や医薬品からのヨウ素の摂りすぎ
- バセドウ病の治療後
などが挙げられます。
チラーヂンS[レボチロキシン]の作用機序、特徴
甲状腺機能低下症の患者は、甲状腺ホルモンが少ないことで上記のむくみや代謝減少などの症状を引き起こします。
その結果、体重の増加や疲れやすくなったり、抑うつ状態になったりと日常生活に支障が出るのです。
チラーヂンSは、体内で足りなくなった甲状腺ホルモンを補う甲状腺ホルモン薬のため、甲状腺機能低下症の治療薬として使用されます。
日本では1922年からチラーヂン末というブタの甲状腺を原料としていた天然品を使用してきました。
しかし、天然由来であるため甲状腺ホルモン[T3とT4]の割合にバラツキがある点が問題視されてきました。
より安定な合成の甲状腺ホルモン薬として、チラーヂンS[レボチロキシン]が使用されています。
そのため、チラーヂン末は2014年に販売中止となりました。
やっくん
チラーヂンS[レボチロキシン]は、甲状腺ホルモンであるT4[チロキシン]の合成品であるため、一定量の甲状腺ホルモンを投与することで、甲状腺ホルモンの働きを助けます。
チラーヂンS[T4]とチロナミン[T3]の違い
チラーヂンS[T4]、チロナミン[T3]はいずれも甲状腺ホルモンですが、作用の速さ・強さが異なります。
T4の状態で多くは存在していますが、末梢組織で多くが脱ヨウ素化されるため、T3に代謝されます。
つまり、チロナミン[T3]のほうが速効性があり、また、作用も強いことがわかっています。
やっくん
臨床では、作用が弱く調節が利きやすいチラーヂンSが一般的に使用されています。
チラーヂンS[レボチロキシン]の副作用
チラーヂンS[レボチロキシン]は、橋本病など甲状腺機能低下症の治療薬として、1964年に発売された古い薬です。
重大な副作用として、狭心症、肝機能障害、黄疸、副腎クリーゼ、晩期循環不全が報告されています。
チラーヂンS[レボチロキシン]の禁忌
- 新鮮な心筋梗塞のある患者
[基礎代謝の亢進により心負荷が増大し、病態が悪化することがあります。]