門前薬局の見直し
調剤薬局業界では、巨大な調剤薬局チェーンが参入し、店舗数が多ければ多いほど利益率が高くなる傾向があります。
◇保険薬局の規模ごとの収益率
店舗数 | 1店舗 | 2-5店舗 | 6-19店舗 | 20店舗以上 |
---|---|---|---|---|
収益率 | 1.8% | 3.5% | 7.0% | 8.4% |
[厚生労働省:第19回医療経済実態調査]
このように店舗数が多い大手の調剤薬局では内部留保と呼ばれる利益の剰余金が年々増加していることが問題視されています。
しかし、収益率が高い調剤薬局は複数店舗を経営するグループで顕著であり、店舗数が少ない調剤薬局ではほとんど利益が出ていないことも事実です。
こういった小規模の調剤薬局も、しっかりとしたかかりつけ機能を持っているならば経営していけるような配慮が必要であると議論されました。
調剤基本料の特例[調剤基本料2]
調剤基本料とは、薬剤師が処方箋にしたがって調剤することに対する手数料のようなものです。
薬剤料や技術料は別にあるため、利益率が高い診療報酬です。
この調剤基本料41点にさまざまな特例を付けることが協議されてきました。
簡単に言えば、本来のかかりつけ機能を持っている薬局が41点を算定でき、十分な質を提供できていない薬局は特例で減点しようという制度です。
2016年の診療報酬改定では、特例の範囲がさらに広げられ、特例対象から外れる除外要件を厳格化することに決まりました。
[厚生労働省資料より]
大型門前薬局の評価の見直し[調剤基本料3]
大型の定義については、ひと月当たりの処方箋枚数を用いることになりました。
薬局グループ全体の処方せん受付回数が月4万回を超える薬局のうち、①特定の医療機関からの処方せん集中率が95%を超える保険薬局、または、②医療機関と不動産の賃貸借関係にある保険薬局を指しています。
[厚生労働省資料より]
薬局グループとは、親会社や子会社、関連会社、フランチャイズ契約の会社などが含まれます。
月4万回とは、前年3月~当年2月末までの処方せん受付回数を12(ヶ月)で割った年間の平均枚数を用います。
2016年診療報酬改定内容-門前薬局の見直し-
調剤基本料
特例除外 を満たす |
かかりつけ 機能がない |
基準調剤加算 | 薬剤服用歴管理指導料 | ||
---|---|---|---|---|---|
通常 | 調剤基本料1 41点 | ー | 21点 | 算定可能 [かかりつけ機能必須] |
50/38点 |
特例 | 調剤基本料2 25点 [従来の特例] |
基本料1に | 13点 | 算定不可 | 50点 |
調剤基本料3 20点 [大型門前薬局の特例] |
基本料1に | 10点 | 50点 | ||
調剤基本料4 31点 [調剤基本料1の未妥結] |
ー | 16点 | 50/38点 | ||
調剤基本料5 19点 [調剤基本料2の未妥結] |
基本料4に | 10点 | 50点 | ||
特別調剤基本料 15点 [調剤基本料3の未妥結or調剤基本料の届出なし] |
基本料4に | 8点 | 50点 |
特例除外のための条件
従来の特例は廃止され、かかりつけ薬剤師としての業務を一定以上行っている保険薬局は特例の対象から除外することができます。
現行 | 改定後 |
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24時間開局 | ・薬剤師の5割以上がかかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準に適合 ・薬剤師一人当たり月100件以上がかかりつけ薬剤師指導料or包括管理料算定 |
このように、特例除外の条件が質を求めた内容になり、かなり厳しくなりました。
かかりつけ機能がない場合の減点
新設 |
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かかりつけ機能の基本部分を実施していない保険薬局は調剤基本料を100分の50とする。
[処方せんの受付回数が1月に600回以下の保険薬局を除く] |
◇かかりつけ機能の基本部分とは?
下記項目の算定回数の合計が1年間に10回未満の保険薬局
[1年間とは、前年3月~当年2月末までを指します]
- 調剤料の時間外加算等、夜間・休日等加算
- かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料
- 外来服薬支援料、服薬情報等提供料
- 薬剤服用歴管理指導料の麻薬管理指導加算、重複投薬・相互作用等防止加算
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、退院時共同指導料、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
- 介護予防居宅療養管理指導費、居宅療養管理指導費