対物業務から対人業務へ
これまで、調剤薬局で働く薬局薬剤師は、服薬指導を含めた“対人業務”ではなく調剤や監査、薬歴の記入といった“対物業務”に時間を掛けてきました。
[厚生労働省資料より]
これは、薬を貰う患者さんが最も期待すること=時間の短縮であると言われていることが原因のひとつです。
時間を短縮するために、調剤や監査などの対物業務をいかに早くするかということが競われてきたのです。
しかし本来、医薬分業とは、丁寧かつ適切な服薬指導や重複投与・相互作用の防止、薬の管理など患者さん主体になるべきであると国は考えています。
また、医療費の面では、院内処方よりも院外処方の方が約1000円[患者負担は3割負担の場合300円]も上がります。
この300円の負担増加を患者さんの約60%は高すぎると考えています。
このように、薬局薬剤師の仕事は、今以上に患者さんに評価される必要があり、現在の対物業務中心ではなく対人業務中心の仕事が求められています。
薬剤服用歴管理指導料にかける時間
薬剤服用歴管理指導料の算定条件は次の5つです。
- 薬の説明書[薬情]の提供と説明
- 患者ごとの薬歴の記録と指導
- お薬手帳の記載
- 残薬確認
- 後発医薬品の情報提供
しかし、新規来局の新患さんと2回目以降の患者さんとでは、これらにかける時間が全く異なるといったデータが出ています。
なぜなら、同じ処方内容の場合、1の説明は同じことの繰り返しになるため手短に済ませます。
2の薬歴には、アレルギー歴や併用薬などの患者情報は既に初回で記載しています。
このように、初回では薬剤服用歴管理指導料を算定するために患者1人に対し約5分掛かかることに対し、2回目以降では約3分と大きく短縮されるといったデータが報告されています。
こういった背景から、2016年の診療報酬改定では、2回目以降の患者において算定できる点数を少なくすることになったのです。
2016年診療報酬改定内容-対物業務から対人業務へ-
薬剤服用歴管理指導料
服薬状況の一元管理ができている患者に対しては、薬剤服用歴管理指導料の点数を低くしました。
現行 | 改定後 |
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薬剤服用歴管理指導料[お薬手帳持参] 41点 薬剤服用歴管理指導料[お薬手帳なし] 34点 |
薬剤服用歴管理指導料[6ヶ月以内に処方箋持参] 38点 薬剤服用歴管理指導料[上記以外] 50点 薬剤服用歴管理指導料[お薬手帳なし] 50点 |
基準調剤加算
管理薬剤師の実務経験、在宅訪問の実施、開局時間、相談時のプライバシーへの配慮等の条件を見直し対人業務を強化することで、基準調剤加算1と2を統合しました。
現行 | 改定後 |
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基準調剤加算1 12点 基準調剤加算2 36点 |
基準調剤加算 32点
[調剤基本料1(41点)を算定している保険薬局のみ加算できる。] |
[施設基準]
- 医薬品の備蓄数1200品目以上
- 平日1日8時間以上、土曜日もしくは日曜日一定時間以上、合計週45時間以上の開局時間
[疑義解釈その1より土曜日又は日曜日の開局時間に関しては、具体的な時間数は規定しない] - 24時間調剤及び在宅業務の体制[近隣との連携含む]
- 麻薬小売業者の免許を取得
- 医療材料及び衛生材料供給体制の整備、在宅療養支援診療所(又は在宅療養支援病院)、訪問看護ステーションとの連携体制の整備、ケアマネージャーとの連携体制の整備
- 年1回以上の在宅業務実績
- 管理薬剤師の実務経験:薬局勤務経験5年以上、当該保険薬局に週32時間以上勤務かつ1年以上在籍
- かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料に係る届出
- 患者のプライバシーへ配慮した構造
[パーテーション、カウンターと待合の距離を確保するなど会話が漏れ聞こえない対策を取る] - 定期的な研修実施
- 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)への登録を義務づけ
- 健康相談又は健康教室を行っている旨の薬局内掲示
- 特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が90%を超える薬局は、後発医薬品の調剤割合が30%以上
特定薬剤管理指導加算(ハイリスク薬)及び乳幼児指導管理加算
対人業務に関する業務の評価を充実するため、ハイリスク薬加算、乳幼児指導管理加算の点数を高くしました。
現行 | 改定後 |
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特定薬剤管理指導加算 4点 | 特定薬剤管理指導加算 10点 |
乳幼児服薬指導加算 5点 | 乳幼児服薬指導加算 10点 |
外来服薬支援料
従来は処方医だけだったが、薬局に残薬を持ち込み整理を行った場合も月1回のみ算定できることになりました。
現行 | 改定後 |
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外来服薬支援料 185点[処方医に持っていく] | 外来服薬支援料 185点[処方医か薬局に持っていく] |
2016年基準調剤加算における調剤薬局のお盆休み・年末年始休み
基準調剤加算を算定している薬局で問題になるのが休日です。
なぜなら、基準調剤加算の要件の一つに
が含まれているからです。
つまり、この文面のみではお盆休みにも関わらず週45時間以上開局しなくてはなりません。
せっかくのお盆休みなのでどこか抜け穴がないかと探してみました。
しかし、出てきたのは疑義解釈資料に記載のある次の文面でした。
「当該保険薬局の開局時間は、平日は1日8時間以上、土曜日又は日曜日のいずれかの曜日には一定時間以上開局し、かつ週45時間以上開局していること」
とあるが、祝日を含む週(日曜始まり)については、「週45時間以上開局」の規定はどのように取り扱うのか。
[平成28年診療報酬疑義解釈資料その1より]
これによると、祝日のある週と年末年始は週45時間以上開けなくてもいいと解釈できます。
よって、8月11日は今年から山の日と祝日になったため、週45時間以上開局の必要性はなくなりました。
しかし、その他お盆休みは祝日ではなく平日に該当するため、1日8時間以上の開局が必要であると考えられます。
今年のお盆は、クリニックや病院が閉まっているのに調剤薬局のみ開いているケースが増えるのではないでしょうか?
安倍首相は長時間の労働を止めるようにと言っています。
しかし、人手不足が深刻な薬剤師業界において、かかりつけ薬剤師の24時間対応やお盆休みがない現実は長時間労働を助長するものと言えるでしょう!
私個人としては、早急な改善をお願いしたいと思っています。