学校プールでは、遊離残留塩素濃度をはじめ、さまざまな基準が設けられています。
日常の検査に加え、学校薬剤師が年1回の定期検査を行います。
今回は学校プールの水質検査項目についてまとめてみました。
学校プールの水質管理:現場記載事項
学校プールの水質検査では、現場で測定する”現場記載事項”と、検査機関に委託してその結果を記載する”検査室記載事項”の2項目があります。
現場で測定する項目としては、次の4項目です。
- 外気温
- 水温
- 濁度
- 遊離残留塩素濃度
1.外気温
外気温に基準値はありませんが、外気温と水温の差が5度以内が望ましいとされています。
2.水温
水温に基準値はありませんが、22℃以上が望ましいとされています。
3.濁度
濁度の基準として、2度以上水中で3m離れた位置からプールの壁面が明確に見えることと定められています[=濁度2度以下の目安]。
4.遊離残留塩素濃度
遊離残留塩素濃度の基準値は、0.4mg/L~1.0mg/Lです。
測定方法は、対角線上の3点以上(表面と中層)を測定します。
次の図が測定場所の一例です。
表面or中層と記載してありますが、学校環境衛生基準では水面下約20cm付近の水を採取することと定められています。
また、これらの項目に加え、検査値に影響がありそうな消毒剤の名称や天候等も記載します。
学校プールの水質管理:検査室記載事項
検査機関に委託して測定する項目は次の7項目です。
- pH
- 濁度
- 過マンガン酸カリウム消費量
- 総トリハロメタン
- 循環ろ過装置の処理水
- 大腸菌
- 一般細菌
学校プール水の採水方法
採水前に微生物の混入を防ぐためしっかりと手を洗います。
採水するプール水は、プール中央水面下約20cmの中層の水を採水します。
3つの検査容器にプール水を入れて検査機関へ提出します。
①ポリボトル500mL[理化学試験用]
- プール水で共洗いします
- 水面下20cmに沈め、フタを開けプール水を満たします
- 採取したプール水を②の容器に移します
- 再度2の手順によりプール水を満たし提出します。
②滅菌ハイポ入り容器200mL[大腸菌、一般細菌用]
- 滅菌状態のため、共洗いはせず容器を清潔に保ちます
- ①で採水したプール水を8分目まで加えます
- 5℃以下で保存し、検査センターへ提出します
③ガラス容器100mL[トリハロメタン用]
- プール水で共洗いします
- 水面下20cmに沈め、フタを開けプール水を満たします
- 気泡が入ってないことを確認し、5℃以下で保存、検査センターへ提出します
1.pH
pHの基準値は、5.8以上8.6以下となります。
pH低下の理由としては、酸性雨、有機物による消毒剤の分解、有機系の消毒剤[トリクロロイソシアヌル酸]の使用などが考えられます。
2.濁度
濁度の基準値は2度以下となります。
プール水中で3m離れた壁面が明確に見えるかが基準となりますが、正確には濁度計で測定します。
3.過マンガン酸カリウム消費量
過マンガン酸カリウム消費量として、12mg/L以下であることと定められています。
過マンガン酸カリウムは強力な酸化剤です。
炭素を含む有機物は、過マンガン酸カリウムによって酸化されるため、その消費量が有機物=汚れの指標として用いられています。
4.総トリハロメタン
総トリハロメタンは0.2mg/L以下であることが望ましいとされています。
総トリハロメタンとは、クロロホルム・ブロモジクロロメタン・ジブロモクロロメタン・ブロモホルムと4種類の総和を指します。
これら4種類の化合物は、有機物を塩素消毒することによって生じる副生成物です。
つまり、有機物=汚れの指標のひとつとして使用されているのです。
5.循環ろ過装置の処理水
循環ろ過装置の処理水は、濁度が0.5度以下であること[0.1度以下が望ましい]と定められています。
循環ろ過装置出口の採水方法
採水前には5分ほど水を流した後、循環ろ過装置出口付近の採水栓から採水します。
6.大腸菌
大腸菌は検出されないこととされています。
大腸菌が検出された場合は、塩素濃度の低下や外部からの汚れの持ち込みを疑います。
7.一般細菌
一般細菌は、1mL中200コロニー以下であることと定められています。
大腸菌同様、一般細菌の量が多い場合は塩素濃度の低下を疑います。